とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

乳がんに対する乳房温存術後放射線治療;寡分割照射/短期照射 vs. 通常分割照射

・欧米(カナダやイギリス)から、乳房温存手術後の放射線治療において、3週間程度の寡分割照射/短期照射は5週間程度の従来の通常分割照射に劣らないとの成績が報告されていました。

・日本でも、多施設共同試験で、寡分割照射照射/短期照射の安全性は確認されていましたが、アジア人における寡分割照射のエビデンスは不十分なものでした。

・中国からランダム化試験の長期成績が報告され、アジア人での有効性が確認された形になろうかと思われます。

 

Wang SL, et al. J Clin Oncol. 2020. PMID: 32780661

 

・アジア人における、乳がんに対する乳房温存術後放射線治療における、通常分割照射と寡分割照射のランダム化比較試験の報告はない

・今回の試験では、中国における標準的な6週間の照射と比較して、3.5週間の寡分割照射が非劣性であるかを検討した

 

対象と方法:

・中国4施設、乳房温存手術が行われた T1-2N0-3 浸潤性乳がん
・(1:1)の割合で、全乳房に対する通常分割照射群と寡分割照射群にランダム化
・照射:全乳房±領域リンパ節照射、+ブースト照射
・通常分割照射:50 Gy/25回(5週)+ブースト照射 10 Gy/5回(1週)
・寡分割照射:43.5 Gy/15回(3週)+ ブースト照射 8.7 Gy/3回(3日)
・主要評価項目:5年局所再発(5年局所再発 noninferiority margin: 5%)

 

結果:
・2010年から2015年、734例が寡分割照射群(368例)と通常分割照射群(366例)にランダム化
・中央経過観察期間 73.5ヶ月 (IQR 60.5-91.4)
・5年累積局所再発率:寡分割照射群 1.2%、通常分割照射群 2.0% (HR 0.62, 95% CI 0.20-1.88; p=0.017 for noninferiority)
・通常分割照射と比較して、寡分割照射で急性期のGrade 2-3皮膚毒性は少なかった(p=0.019)
・他、急性期/晩期毒性に両群間に有意な差異を認めなかった。

 

結論:
乳がんに対する乳房温存術後放射線治療において、通常分割照射および寡分割照射後後の局所再発率は同様に低く、毒性も同様