とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

前立腺がん術後にPSA値が下がりきらなかった(persistent PSA)場合の救済治療

Milonas D, et al. Clin Transl Oncol. 2021. PMID: 34453699
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34453699/

 

・高リスク前立腺がんに対する手術(前立腺全摘除術)後、PSAが下がり切らなかった患者(persistent PSA)に対する早期の救済治療

 

<背景>
前立腺がんに対する手術後、PSAの下がりきらなかった患者(persistent PSA)では病気の進行リスクが高い
前立腺がんに対する根治的前立腺全摘除術後、persistent PSAであった患者に対する早期の救済療法の治療成績への影響を評価した

 

<方法>
・後ろ向き研究、ベルギー
・高リスク前立腺がんに対し前立腺全摘除術後、4-8週時点でのPSA値により、PSA >0.1 ng/mLを persistent PSAと定義し、PSA <0.1 ng/mLまで低下した患者群と治療成績を比較した
・救済放射線治療±アンドロゲン抑制療法(ホルモン療法)施行例とアンドロゲン抑制療法(ホルモン療法)単独治療例の治療成績を比較した

 

<結果>
・高リスク前立腺がんに対し根治的前立腺全摘除術が施行された414例のうち、125例(30.2%)ではPSAがpersistent PSAとなった
・手術後4-8週時点でPSA >0.1 ng/mL(persistent PSA)の患者では、10年無増悪生存率 63.8%、10年前立腺がん特異的生存率:78.5%、10年全生存率:54%
・手術後4-8週時点でPSA <0.1 ng/mLとなった患者では、10年無増悪生存率 93.5%、10年前立腺がん特異的生存率 98.3%、10年全生存率 83.2%
・無増悪生存、前立腺がん特異的生存、全生存、いずれもpersistent PSAとなった患者で不良であった(p<0.0001)
前立腺全摘除術4-8週時点でPSA >0.1 ng/mL(persistent PSA)の患者において、アンドロゲン抑制療法(ホルモン療法)単独治療が行われた患者は、救済放射線治療±アンドロゲン抑制療法(ホルモン療法)が行われた患者と比較して、前立腺がん特異的生存(HR 3.9, p=0.005)および全生存(HR 4.7, p<0.0001)が不良であった
・一方、手術後4-8週時点でPSA値が <0.1 ng/mLとなった患者では、アンドロゲン抑制療法(ホルモン療法)単独治療が行われた患者と救済放射線治療±アンドロゲン抑制療法(ホルモン療法)の治療成績に統計学的な有意差は認められなかった(HR 1.6, p=0.2)

 

<結論>
・高リスク前立腺がんに対し根治的前立腺全摘除術が行われた患者のうち、術後4-8週後時点でのPSA値が0.1 ng/mL以上(persistent PSA)の患者では治療成績が不良であった
・Persistent PSAの患者では、早期のアンドロゲン抑制療法(ホルモン療法)単独治療が行われた患者と比較して、救済放射線治療±アンドロゲン抑制療法(ホルモン療法)が行われた患者で前立腺がん特異的生存および全生存が有意に良好であった

 

 

<関連>

radiatpost.info