とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

早期乳がんに対する乳房温存術後放射線治療 乳房部分照射 vs. 全乳房照射

Hickey BE, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2021. PMID: 34459500
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34459500/

 

・早期乳がんに対する乳房温存術後放射線治療
・乳房部分照射(partial breast irradiation) vs. 全乳房照射(whole breast radiotherapy)
・システマティックレビュー/メタアナリシス

 

<目的>

・早期乳がんに対する乳房温存療法において、通常分割または寡分割照射による全乳房照射と比較して、乳房部分照射が同等または優れるかを評価した

 

<選択基準>

・交絡のないランダム化試験で、乳房温存手術後の乳房部分照射/加速乳房部分照射と全乳房照射を比較した試験

 

<結果>
・9ランダム化試験、15,187例のT1-2 N0-1 M0 浸潤性乳がん(または非浸潤性乳管がん [6.3%])、Grade I または IIの(2 cm未満 または 3 cm未満の)孤立性腫瘍(uniforcal tumor)で断端陰性切除施行例
・今回の解析はこのレビューの2度目のアップデートで、2つのランダム化試験、4432例を追加したデータを解析
・全乳房照射と比較して、乳房部分照射では局所無再発生存が若干不良な様子(3/1000;95% CI 6 fewer to 0 fewer)(HR 1.21, 95% CI 1.03-1.42;8研究, 13,168例)
・美容成績は乳房部分照射/加速乳房部分照射でおそらく不良(63/1000, 95% CI 31 more to 92 more)(OR 1.57, 95% CI 1.31 to 1.87; 6研究, 3652例)
・全生存は乳房部分照射と全乳房照射で同等(0/1000, 95% CI 6 fewer to 6 more)(HR 0.99, 95% CI 0.88-1.12, 8研究, 13,175例)
・晩期の放射線治療に関連した毒性(皮下の線維化)はおそらく乳房部分照射/加速乳房部分照射で増加(140/1000 more, 95% CI 102 more to 188 more)(OR 5.07, 95% CI 3.81-6.74, 2研究, 3011例)
・乳房部分照射/加速乳房部分照射と全乳房照射の比較において、乳がん特異的生存の差異はおそらくわずか(1/1000 less, 95% CI 6 fewer to 3 more)(HR 1.06, 95% CI 0.83-1.36, 7研究, 9865例)
・遠隔無再発生存の差もおそらくごくわずか(1/1000 fewer, 95% CI 4 fewer to 6 more)(HR 0.95, 95% CI 0.80-1.13, 7研究, 11,033例)
・(救済)乳房切除術の施行率もごくわずかか差異はない(2/1000 fewer, 95% CI 20 fewer to 20 more)(OR 0.98, 95% CI 0.78-1.23, 3研究, 3740例)

 

<結論>

・早期乳がんに対する乳房温存療法において、乳房温存術後の全乳房照射と比較して、乳房部分照射/加速乳房部分照射後の局所無再発生存は不良な様子であるが、その差は小さく、大半の女性では局所再発なく経過

全乳房照射後と乳房部分照射/加速乳房照射後の全生存は同様で、その他の治療成績も差が認められないかごくわずかなものであった
・晩期効果(皮下の線維化)に関しては乳房部分照射/加速乳房部分照射後で不良な可能性があり、不良な美容成績と関連しているかもしれない
・有効性と安全性に関する確定的に結論を得ることは現時点では困難で、どのような方法で乳房部分照射/加速乳房部分照射を行えばよいのかも確定できない

 

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