とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

進行胃がんに伴う出血に対する止血目的の緩和的放射線治療

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Lee J, et al. Radiat Oncol. 2021. PMID: 34425855
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34425855/

 

・進行胃がんに伴う出血に対する放射線治療

 

<背景>
・外科的手術不能進行胃がんに伴う胃出血は生活の質(QOL, quality of life)へ影響を与え時に致死的となる
胃がんからの胃出血に対する緩和的放射線治療の有効性および適切な治療戦略の調査を行った

 

<方法>
・2009年1月-2019年2月、胃がんに伴う胃出血に対し緩和的放射線治療を施行した57例を解析した
放射線治療前、治療終了時、1ヶ月、2ヶ月後のヘモグロビン値の評価を行った
放射線治療後の再出血はヘモグロビン値の7.0 g/dL未満への低下 または 放射線治療後の輸血の施行と定義した

 

<結果>
放射線治療の生物学的等価線量(BED, biologically effective dose)(α/β = 10):37.5 Gy(23.6 - 58.5)
・主な線量分割レジメン:25 Gy/5回
・ヘモグロビン値(平均):治療前 6.6、治療終了時 9.7、1ヶ月後 10.3、2ヶ月後 9.7 g/dL
・総線量、1回線量、分割回数による再出血率に有意な違いはみられなかった
放射線治療後2ヶ月以内のCTによる胃腫瘍の奏効評価において、出血が制御できた患者では部分奏効例が多かった(25.0% vs. 10.8%, p=0.023)
・3ヶ月以内に出血制御ができた患者では全生存が良好であった(全生存期間 [中央値] 15.4 vs. 10.0 ヶ月、p=0.048)

 

<結論>

胃がん患者において、放射線治療は胃出血を制御するのに有用な治療法で、5分割照射の短期間の治療で効果が認められる

 

<関連>

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