とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

乳がん骨転移に対する緩和的放射線治療の既往は、パルボシクリブ(イブランス®)による骨髄抑制を悪化させるか??

Norman H, et al. Clin Breast Cancer. 2021. PMID: 34419350
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34419350/

 

乳がん骨転移に対する放射線治療の既往がパルボシクリブ(イブランス®)による骨髄抑制へ与える影響

 

<背景>
・パルボシクリブはサイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害剤で、主な毒性は骨髄のcytostatic CDK6阻害に伴う骨髄抑制(特に好中球減少)です。
・パルボシクリブにより放射線治療に関連する毒性が増強する可能性が示唆されているが、緩和的放射線治療が行われた少数例で評価が行われているにとどまり、骨転移のみを対象に検討された研究はこれまでなかった。

 

<対象と方法>
・単施設、後ろ向き研究(米国)
・2015年-2019年、進行乳がんで、パルボシクリブの投与が行われた女性を対象とした。
・Primary exposure:パルボシクリブ投与前1年以内の骨転移に対する放射線治療の施行
・主要評価項目:パルボシクリブ第1サイクルでの骨髄抑制の発生率と重症度

 

<結果>
・247例の患者のうち、47例に対しパルボシクリブ投与開始前1年以内に骨転移に対する放射線治療が行われていた
・パルボシクリブ投与第1サイクルにおいて、骨転移に対する放射線治療歴がある患者では、リンパ球数(ALC, absolute lymohocyte count)が少なかった(0.84 vs. 1.10 K/m(3), p<0.001)
・骨転移に対する放射線治療の既往の有無による、好中球減少、貧血、血小板減少の発生率は同様であった
・10分割以上の放射線治療の既往がある患者では、短期照射が行われた患者と比較して、パルボシクリブ第1サイクルで中断を要する頻度が高かった(42.9% vs. 11.1%, p=0.03)
放射線治療に関連した因子と他の血液毒性や用量減量との関連は見られなかった

 

<結論>
・パルボシクリブ投与開始前1年間に骨転移に対し緩和的放射線治療が行われた患者では、パルボシクリブ投与第1サイクル時点において大きくリンパ球数が減少したが、好中球減少や貧血、血小板減少には有意な違いは見られなかった

 

<関連>

radiatpost.info

とある放射線治療医の備忘目録