とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

脳転移に対する定位放射線治療/定位手術的照射と免疫チェックポイント阻害剤の同時併用

Chen L, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2018. PMID: 29485071
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29485071/

 

・非小細胞肺がん/悪性黒色腫(メラノーマ)/腎細胞がん脳転移に対する免疫チェックポイント阻害薬と定位放射線治療/定位手術的照射の同時併用
・後ろ向き研究、米国

 

<目的>
・脳転移患者に対する定位放射線治療/定位手術的照射と免疫チェックポイント阻害剤の同時併用の治療成績への効果と安全性を評価すること

 

<対象と方法>
・2010-2016年、非小細胞肺がん、悪性黒色腫、腎細胞がん患者で脳転移に対し定位放射線治療/定位手術的照射を施行した患者を後ろ向きに同定した。
・免疫チェックポイント阻害剤:抗CTLA-4薬(イピリムマブ)、抗PD-1薬(ニボルマブ、ペンブロリズマブ)
・免疫チェックポイント阻害剤が進行中またはまだ結果が報告されていない臨床試験として投与されている患者は解析から除外した。
・免疫チェックポイントの同時併用を、定位放射線治療/定位手術的照射の2週以内の免疫チェックポイント阻害剤の投与と定義した。
・患者を定位放射線治療/定位手術的照射単独(SRT/SRS単独)、定位放射線治療/定位手術的照射と免疫チェックポイント阻害剤の非同時併用(SRT/SRS-ICI非同時併用)、同時併用(SRT/SRS-ICI同時併用)の3群に群分けを行い比較を行った。

 

<結果>
・合計260例、脳転移623病変に対して定位放射線治療/定位手術的照射が行われていた。
・これらのうち、181例はSRT/SRS単独で治療されており、79例に対しSRT/SRTと免疫チェックポイント阻害剤の併用が行われ、35%の患者では同時併用が行われていた。
・SRT/SRSと免疫チェックポイント阻害剤の同時併用による有害イベントの増加や急性期神経毒性の増加を認めなかった。
・SRT/SRSの同時併用が行われた患者では、SRT/SRS後、3個以上の脳転移の発生が少なかった(Odds ratio 0.337, p=0.045)
・全生存期間(中央値):SRT/SRS単独 12.9ヶ月、SRT/SRS-ICI非同時併用 14.5ヶ月、SRT/SRS-ICI同時併用 24.7ヶ月
・SRT/SRS-ICI同時併用では、SRT/SRS単独(Hazard ratio [HR] 2.69, p=0.002)やSRT/SRS-ICI非同時併用(HR2.40, p=0.006)と比較して全生存が良好であった。
・免疫チェックポイント阻害剤投与前にSRT/SRSが行われた患者(HR 3.82, p=.002)や免疫チェックポイント阻害剤投与後にSRT/SRSが行われた患者(HR 2.64, p=0.021)と比較して、同時併用が行われた患者で全生存が良好であった。

 

<結論>
・脳転移に対する免疫チェックポイント阻害薬と定位放射線治療/定位手術的照射を同時併用は、有害イベントの発生の増加なく、新規の脳転移の発生を減少させ、生存成績を改善させる。