とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

早期肺がんに対する体幹部定位放射線治療後の放射線肺臓炎を予測する因子は??

f:id:naminamito:20210904142239p:plain

Saha A, et al. Radiother Oncol. 2021. PMID: 33333139
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33333139/

 

・早期肺がんに対する体幹部定位放射線治療後の放射線肺臓炎の予測因子の検討
コホート研究、英国

 

<背景>
・医学的に手術不能な早期肺がんに対する標準治療は体幹部定位放射線治療(SABR, stereotactic ablative radioatherapy / SBRT, stereoractic body radiotherapy)です
・これらの患者に対する体幹部定位放射線治療後の放射線肺臓炎発症の予測因子に関してはほとんど同定されていません
・今回の研究では、早期肺がんに対し体幹部定位放射線治療施行例における症候性放射線肺臓炎発症の臨床的およびdosimetricな因子の同定を行った

 

<対象と方法>
・2009年5月-2018年8月、英国にて肺がんに対し体幹部定位放射線治療を施行した患者の解析を行った

 

<結果>
・合計1266例の解析を行った
・年齢(中央値)75歳、666例(52.6%)は女性であった
・経過観察期間(中央値)56ヶ月
・65%の患者では55 Gy/5回の照射が行われていた
・43%の患者はPS 2で、16.2%の患者はPS 3であった
・Charlson comorbidity index (中央値)6(2-11)
・腫瘍のSUV max(standardized uptake value max)(中央値)6.5
・402例(31.8%)では組織学的な診断が得られており、他の患者は画像により診断され治療が行われていた
・腫瘍サイズ(中央値)20 mm(4-63 mm)
・計画標的体積(PTV, planning target volume)(中央値)30.3 cc
R100(中央値)1.1、R50(中央値)5.6、D2cm 32.8 Gy
・平均肺線量(中央値) 3.9 Gy、肺V20 5%、肺V12.5 9.3%
・85例(6.7%)に症候性(grade 2+)肺臓炎が認められ、Grade 3肺臓炎は5例(0.4%)にミオめられた
・5%の患者で肋骨骨折が認められたが、症候性の患者はこれらのうち28%のみであった
・(単変量解析)下葉病変、大きな腫瘍サイズ、計画標的体積(PTV)、平均肺線量、肺V20Gy、肺V12.5Gyが症候性肺臓炎と関連していた
ROCカーブ解析における適切なカットオフ値:腫瘍サイズ 22.5 mm(AUC 0.565)、計画標的体積 27.15 cc(AUC 0.58)、平均肺線量 3.7Gy(AUC 0.633)、肺V20Gy(AUC 0.597)、肺V12.5Gy 9.5%(AUC 0.616)
ROCカーブで示された閾値を超える患者では放射線肺臓炎(grade 2+)の発生率が高かった

 

<結論>

・早期肺がんに対する体幹部定位放射線治療後のGrade 3放射線肺臓炎の発生率は低いものであった
・下葉棒編、大きな腫瘍サイズ、計画標的体積、平均肺線量、肺V20Gy、肺V12.5Gyが症候性肺臓炎の予測因子であることが示された

 

<関連>

radiatpost.info

とある放射線治療医の備忘目録