とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

早期肛門がん 化学放射線療法 vs. 放射線治療単独

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Parzen JS, et al. J Gastrointest Oncol. 2021. PMID: 34012670
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34012670/

 

・I-II期 肛門扁平上皮がん;化学放射線療法 vs. 放射線療法

 

<背景>
・I-II期 肛門扁平上皮がんに対する適切な治療法に関しては議論がある
・今回の研究ではSEER(Surveillance, Epidemiology, and End Results)registriesの解析を行い、化学療法と放射線治療の併用(化学放射線療法)と放射線治療単独の比較を行った

 

<方法>
・SEER 18 Custom Date registriesよりI-II期 肛門扁平上皮がん患者を抽出した

 

<結果>
・合計4288例のI-II期患者が同定された
・3982例(93%)に対して化学放射線療法、306例(7%)に対して放射線治療単独が行われていた
・経過観察期間(中央値)42ヶ月
・30.8%がT1、69.2%がT2-T3病変であった
・IPTW(inverse probability of treatment wighting)analysisによる調整を行った5年全生存率は76.7%で、化学放射線療法と放射線治療単独に有意差を認めなかった(77% vs. 73.5%, p=0.33)
・サブグループ解析;I期(T1N0)患者では、化学放射線療法(1216例)と放射線治療単独(103例)の比較において、5年全生存率に有意差を認めなかった(86% vs. 84.2%, p=0.74)
・サブグループ解析;II期(T2-T3N0)患者では、放射線治療単独(203例)と比較して、化学放射線療法(1216例)で5年全生存率が良好な経口がみられた(86% vs. 66.4%, p=0.13)
・II期患者では、全生存期間(中央値)が有意に良好であった(119ヶ月 vs. 未到達, p=0.04)

 

<結論>
・I期肛門扁平上皮がん患者においては、化学療法を省略することによる全生存の悪化はなさそう;II期では放射線治療単独と比較して、化学放射線療法が優れていた
・これらの患者の臨床的な意思決定のため前向きなエビデンスの集積が必要

 

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