とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

転移を有する腎細胞がん 少数進行病変に対する体幹部定位放射線治療は有効??

Cheung P, et al. Eur Urol. 2021. PMID: 34399998
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34399998/

 

<背景>
・前向き研究のエビデンスは不十分であるものの、進行病変が少数の場合(少数病変の進行, oligoprogression)の場合には、全身療法の変更を遅らせるため、定位放射線治療が考慮される機会が増えてきている

 

<目的>
チロシンキナーゼ阻害薬投与中、少数の病変の進行が認められた腎細胞がん患者に対する定位放射線治療後後の局所制御、無増悪生存、全身療法の変更割合、全生存を評価すること

 

<対象と方法>
・多施設共同前向き研究にて転移を有する腎細胞がんに対する定位放射線治療を評価した
・適格基準:転移を有する腎細胞がん患者で、チロシンキナーゼ阻害薬治療により3ヶ月以上安全しているか奏効した患者で、進行した転移病変の数が5個以下
・37例、57転移病変が登録された
・介入:少数の増悪病変に対し定位放射線治療を施行し、それまでと同じチロシンキナーゼ阻害薬による治療を継続

 

<結果>
・試験登録までのチロシンキナーゼ阻害薬の投与期間(中央値)18.6ヶ月
・定位照射が行われた病変の1年局所制御率:93%(95% CI 71-98%)
・無増悪生存期間(中央値)9.3ヶ月(95% CI 7.5-15.7)
・1年時点で全身治療の変更を要した割合は47%、全身治療変更までの期間(中央値)12.6ヶ月(95% CI 9.6-14.6)
・1年全生存率:92%(95% CI 85-100%)
・定位放射線治療に関連したGrade 3-5毒性の発生を認めなかった

 

<結論>
転移を有する腎細胞がんに対する定位放射線治療後の局所制御率は高いものであった
・進行病変が少数の患者では、定位放射線治療を行うことにより、全身治療の薬剤の変更を遅らせることが可能

 

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