とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

【NRG/RTOG 9408】限局性前立腺がん 放射線治療単独 vs. 放射線治療+ホルモン療法

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Jones CU, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2021. PMID: 34481017
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34481017/

 

・限局性前立腺がんに対する放射線治療;短期アンドロゲン抑制療法(ホルモン療法)追加による効果
・NRG/RTOG 9408長期成績

 

<目的>
・NRG/RTOG 9408試験において、限局性前立腺がんに対する放射線治療へ、短期アンドロゲン抑制療法(ホルモン療法)を追加することにより全生存が改善することが示され、疾患特的死亡、生物学的(PSA)再発、局所増悪、遠隔再発も減少した
・今回の研究において、長期経過観察においても、アンドロゲン抑制療法(ホルモン療法)の追加効果は持続的に全生存を改善し、前立腺がんに伴う塩部、生物学的(PSA)再発、遠隔再発を抑制するかを評価した

 

<対象と方法>
・1994-2001年、NRG/RTOG 9408試験では北米212施設において、2028例の限局性前立腺がん(T1b-T2b, N0、PSA 20 ng/mL以下)の患者を、放射線治療単独群と放射線治療+短期アンドロゲン抑制療法群にランダム化した
・層別化:PSA値、腫瘍のグレード、手術によるリンパ節ステージング vs. 臨床的リンパ節ステージング
・アンドロゲン抑制療法:フルタミド+ゴセレリンまたはリュープロレインを4ヶ月間投与行った
前立腺に対する放射線治療(66.6 Gy)を2ヶ月後に照射開始した

 

<結果>
・生存患者の経過観察期間(中央値)14.8年(0.16-21.98)
・10年全生存率(放射線治療単独 vs. 放射線治療+アンドロゲン抑制療法)56% vs. 63%
・18年全生存率(放射線治療単独 vs. 放射線治療+アンドロゲン抑制療法)23% vs. 23%(HR 0.94, 95% CI 0.85-1.05, p=0.94)
・ハザードは比例しなかった(p=0.003)
・18年時点での制限付き平均生存期間:放射線治療+アンドロゲン抑制療法群 11.8年、放射線治療単独群 11.3年
・10年疾患(前立腺がん)特異的死亡率:放射線治療単独群 7%、放射線治療+アンドロゲン抑制療法群 3%
・18年疾患(前立腺がん)特異的死亡率:放射線治療単独群 14%、放射線治療+アンドロゲン抑制療法群 8%(HR 0.56, 95% CI 0.41-0.75, p<0.01)
・18年時点で、遠隔再発および生物学的(PSA)再発は、放射線治療+アンドロゲン抑制療法群で少なかった
・肝毒性(Grade 3+):放射線治療単独群 1%以下 vs. 放射線治療+アンドロゲン抑制療法群 1%以下
・消化管毒性(Grade 3+):放射線治療単独群 2% vs. 放射線治療+アンドロゲン抑制療法群 3%
生殖器泌尿器毒性(Grade 3+):放射線治療単独群 5% vs. 放射線治療+アンドロゲン抑制療法群 8%

 

<結論>
・15年程度の長期の経過観察後の結果では、4ヶ月のアンドロゲン抑制(ホルモン)療法を追加することにより、およそ6ヶ月程度の全生存の改善効果が認められた

 

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