とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

限局型小細胞肺がんに対する化学放射線療法 寡分割照射 vs. 加速過分割照射

Qiu B, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2021. PMID: 33992717
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33992717/

 

・限局型小細胞肺がんに対するシスプラチン/エトポシド併用化学放射線療法;寡分割照射 vs. 加速過分割照射
・第2相ランダム化試験、中国

 

<目的>
・限局型小細胞肺がんに対する標準治療は化学療法と胸部放射線治療の同時併用およびその後の予防的全脳照射です
・今回、標準的な1日2回照射と1日1回の寡分割照射の有効性と毒性の比較を行った

 

<対象と方法>
・多施設共同、第2相試験(中国)
・対象:18-75歳、病理学的に確認された限局型小細胞肺がん、ECOG PS 0-1
・化学療法:シスプラチン/エトポシド 4-6サイクル
・1日2回照射 45 Gy/30回(加速過分割照射群)と1日1回照射 65 Gy/26回(寡分割照射群)にランダム化した
放射線治療は化学療法の第1-3サイクル時に開始した
・良好な奏効が得られた患者に対しては予防的全脳照射を提案した
・主要評価項目:無増悪生存(PFS, progression-free survival)

 

<結果>
・182例を組み入れた;加速過分割照射群 94例、寡分割照射群 88例
・多くの患者(80.2%)で、化学療法第3サイクルより放射線治療が開始された
・経過観察期間(中央値)24.3ヶ月
・無増悪生存期間(中央値):過分割照射群 13.4ヶ月、寡分割照射群 17.2ヶ月(p=0.031)
・2年無増悪生存率:過分割照射群 28.4%、寡分割照射群 42.3%
・全生存期間(中央値):過分割照射群 33.6ヶ月、寡分割照射群 39.3ヶ月(p=0.137)
・局所領域無増悪生存期間(中央値):過分割照射群 23.9ヶ月、寡分割照射群 未到達(p=0.017)
・多くの毒性の発生率は両群は同様であった、急性期のリンパ球減少は寡分割照射群に多く認められた(71.7% vs. 40.2%, p<0.001)
・食道炎(Grade 3+)(17.4% vs. 15.3%)、肺臓炎(Grade 3+)(3.3% vs. 2.4%)、治療関連性の死亡(2.2% vs. 1.2%)に両群間に有意差を認めなかった

 

<結論>
・限局型小細胞肺がんに対する同時化学放射線療法において、標準的な1日2回照射(過分割照射)と比較して、中等度の寡分割照射後の無増悪生存が良好で、毒性は同様であった
・今後、第3相ランダム化試験にてこのレジメンの比較を行う必要がある

 

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