とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

乳がん脳転移 定位放射線治療後の予後と予後因子

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Wilson TG, et al. Clin Oncol (R Coll Radiol). 2020. PMID: 32131980
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32131980/

 

乳がん脳転移に対する定位手術的照射/定位放射線治療後の治療成績
・後ろ向き研究、英国

 

目的>
乳がんの単発性/多発性脳転移患者において、定位手術的照射(SRS, stereotactic radiosurgery)は外科手術や全脳照射(WBRT, whole brain radiotherapy)の代替治療です。
・現在まで、定位手術的照射後の全生存を予測するような因子のコンセンサスは得られていません。
・今回の研究の目的は、乳がん脳転移に対する定位手術的照射が行われた患者の全生存を評価し、どのような因子が生存成績に影響を与えるかを解析することです。

 

<対象と方法>
乳がん脳転移患者で、定位手術的照射が良い適応と判断された患者を後ろ向きに解析を行った。
・結果:2013-2017年、91例に対し定位手術的照射が施行されていた。
・解析時点で、15例(16.5%)が生存していた
・定位手術的照射後の全生存期間(中央値)15.7ヶ月(IQR 7.7-23.8ヶ月)
・年齢による生存成績への影響は認められなかった(全生存期間 [中央値]:65歳以下 16.3ヶ月、>65歳 11.4ヶ月, p=0.129)
原発腫瘍の乳がんサブタイプが重要な予後因子であることが示された
・全生存期間(中央値):エストロゲン受容体陽性/HER2陽性(ER+/HER2+) 21.4ヶ月、エストロゲン受容体陰性/HER2陽性(ER-/HER2+)20.4ヶ月、トリプルネガティブ 8.5ヶ月
・腫瘍体積の合計が大きい(>10 cm(3))患者では生存成績が不良であった(p=0.0002)が、治療が行われた治療の個数による有意な生存成績への影響は今回の解析では検出されなかった
・頭蓋外病変が落ち着いている患者では、頭蓋外病変の進行が認められる患者と比較して予後が良好であった(全生存期間 [中央値] 20.1ヶ月 vs. 11.4ヶ月, p=0.0011)
・17例では定位手術的照射施行時に頭蓋外に明らかな活動性病変を認めず、これらの患者では全生存期間(中央値)は13.1ヶ月であった

 

<結論>
・トリプル乳がんエストロゲン受容体陽性/HER2陰性、脳転移の体積>10 cm(3)、定位手術的照射施行時に頭蓋外病変の進行が認められる患者では生存成績が不良であった

 

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