とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

悪性黒色腫(メラノーマ)脳転移 定位放射線治療/定位手術的照射と免疫チェックポイント阻害剤の同時併用

Martins F, et al. J Neurooncol. 2020. PMID: 31836957
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31836957/

 

悪性黒色腫(メラノーマ)脳転移に対する定位放射線治療/定位手術的照射(SRS, stereotactic radiosurgery)
・免疫チェックポイント阻害剤や分子標的薬との併用
・後ろ向き研究

 

<背景>
・これまでに悪性黒色腫(メラノーマ)脳転移に対する定位放射線治療/定位手術的照射と免疫療法や分子標的薬の同時併用による相乗効果に関するエビデンスの報告が増加してきている。
・定位放射線治療/定位手術的照射の前後9週以内の免疫チェックポイント阻害剤やBRAF/MEK阻害剤開始の全生存への効果を評価した。

 

<方法>
・2011-2018年、皮膚または原発不明の悪性黒色腫(メラノーマ)脳転移に対していい放射線治療/定位手術的照射を施行した脳転移患者を同定し、解析した。

 

<結果>
・84例の解析を行った。
・全生存期間(中央値)12ヶ月(95% CI 9-20)
・経過観察期間(中央値)30ヶ月(95% CI 28-49)
・PD-1 +/- CTLA-4阻害剤(18例)、イピリムマブ単独治療(10例)、BRAF +/- MEK阻害剤(11例)が開始されていた
・イピリムマブ単独治療が行われた患者と比較して、PD-1 +/- CTLA4阻害剤の投与が行われた患者で生存成績が良好であった(全生存期間 [中央値] 24ヶ月 vs. 7ヶ月, HR 0.11, 95% CI 0.04-0.34, p=0.0001)
・BRAF+MEK阻害剤が行われたサブグループ患者(5例)との比較においても同様のベネフィットが認められた。
・多変量解析において、高齢(>65歳)、同時性の(synchronous)脳転移、転移部位>2、脳転移>4病変、全身状態不良(ECOG PS>1)が予後不良因子であった。
・定位放射線治療/定位手術的照射9週以内のPD-1 +/- CTLA-4抗体療法の開始と良好な治療成績との関連が見られた。
・脳転移に対する定位放射線治療/定位手術的照射施行時の、血清LDH値の正常値の2倍以上の上昇が不良な全生存と関連していた(HR 1.60, 95% CI 1.03-2.50, p=0.04)

 

<結論>
悪性黒色腫(メラノーマ)脳転移に対していい放射線治療/定位手術的照射施行例において、PD-1 +/- CTLA-4阻害剤の同時併用が行われた患者では生存成績が良好であった。
・脳転移の病状に加え、全身性病変の進展が予後因子である様子。このような患者では、血清LDH値の上昇が不良な予後の予測因子である様子。

 

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