とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

乳がんに対する加速乳房部分照射 浸潤性小葉がんは同側乳房内腫瘍再発のリスク因子

Mills MN, et al. Oncologist. 2021. PMID: 34516030
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34516030/

 

乳がんに対する小線源治療による加速乳房部分照射(APBI, accelrated partial breast irradiation)
・米国、後ろ向き研究

 

<背景>
・ABS(American Brachytherapy Society)、ASTRO(American Society of Therapeutic Radiology and Oncology)、GEC-ESTRO(European Society for Radiotherapy and Oncology)、それぞれのガイドラインにおける加速乳房部分照射の適格基準には彰かな違いが認められる。

 

<対象と方法>
・単施設、後ろ向き研究。
・2003-2018年、乳房温存手術と小線源治療による加速乳房部分照射が行われた946例の解析を行った。
・評価項目:全生存、乳がん特異的生存、無再発生存、同側乳房腫瘍再発

 

<結果>
・経過観察期間(中央値):60.2ヵ月
・年齢(中央値)68歳(46-94歳)
・大半の患者(94%)はエストロゲン受容体陽性であった。
・浸潤性乳管がん 821例(87%)、浸潤性小葉がん 68例(7%)
・5年全生存率 93%、乳がん特異的生存率 99%、無再発生存率 90%、同側乳房内腫瘍再発率 1.5%
・単変量解析にて、小葉がん(HR 4.6, p=0.008)、リンパ節の評価なし(lack of nodal evaluation)(HR 6.9, p=0.01)が同側乳房内腫瘍再発のリスク因子であった。
・10年同側乳房内腫瘍再発率:浸潤性乳管がん 2.5%、浸潤性小葉がん 14%。
・ABSやASTRO基準にて不適とされる患者や、ESTRO基準にて高リスクとされる患者の、明らかな同側乳房内腫瘍再発リスクの増加や無再発生存の悪化は認められなかった。

 

<結論>
・浸潤性乳がんに対する加速乳房部分照射は有効な治療であることが示された。
・前向きの確認が必要ではあるものの、現在の適格基準の拡大を考慮する必要がある。
・浸潤性小葉がんに対し加速乳房部分照射を行う場合には注意が必要。

 

<関連>

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