とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

有痛性骨転移に対する再照射 単回照射 vs. 分割照射

Chow E, et al. Lancet Oncol. 2014. PMID: 24369114
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24369114/

 

・有痛性骨転移に対する再照射
・単回照射 vs. 分割照射
・ランダム化試験(非劣勢証明試験)

 

<背景>
・さまざまな原発からの骨転移に伴う疼痛に対する疼痛緩和効果が示されているものの、再照射時の適切な線量分割に関するデータはない。
・有痛性骨転移で再照射が必要な患者に対する2つの線量分割を評価した。
・方法:9カ国、多施設共同ランダム化試験。
・適格基準:18歳以上、画像的に確認された、有痛性(Brief Pain Inventory 2ポイント以上)の放射線治療歴のある骨転移、(もし投与されている場合には)鎮痛薬の用量やスケジュールが安定している患者。
・(1:1)の割合で、8 Gy/1回(単回照射)群と 20 Gy/5回(分割照射)群にランダム化した。
・主要評価項目:2ヶ月時点での疼痛奏効割合(overall pain response)(完全奏効 + 部分奏効)

 

<結果>
・2004年1月-2012年5月、各群 425例がランダム化された。
・ランダム化後、単回照射群19例(4%)、分割照射群 12例(3%)が不適格と判明した。
・単回照射群 140例(33%)、分割照射群 132例(31%)の患者は2ヶ月後の評価が不能であった(これらは intention-to-treat analysisにおいて missing dataとして解析された)。
・Intention-to-treat populationにおいて、単回照射群 118例(28%)、分割照射群 135例(32%)で疼痛の奏効が認められた(p=0.21, 奏効の差 4.00%, 95% CIの上限 9.2%;あらかじめ設定した非劣勢マージン10%未満)
・Per-protocol populationにおいて、単回照射群 116/258例(45%)、分割照射群 134/263例(51%)に疼痛の奏効が認められた(p=0.17, 奏効の差 6.00%, 95% CI 上限 13.2%;あらかじめ設定した非劣勢マージン10%以上)
・14日時点での主な放射線治療に関連した毒性は、食欲低下(単回照射 56%、分割照射 66%)(p=0.011)、下痢(単回照射 23%、分割照射 31%, p=0.018)。
・病的骨折(pathological fracture)が単回照射群 30/425例(7%)、分割照射群 20/425例(5%)に認められた(odds ratio, 1.54, 95% CI 0.85-2.75, p=0.15)
・脊髄/馬尾圧迫が単回照射群 7/425例(2%)、分割照射群 2/425例(<1%)で報告された(odds ratio, 3.54, 95% CI 0.73-17.15, p=0.094)

 

<結論>
・有痛性骨転移で再照射が必要な患者において、分割照射(20 Gy/5回)と比較して、単回照射(8 Gy/1回)は劣らない様子。
・しかしながら、per-protocol analysisでは確認されず、有効性と毒性とのトレードオフが存在するかもしれない。

 

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