とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

【revised STARS】早期非小細胞肺がん 体幹部定位放射線治療 vs. 外科手術

Chang JY, et al. Lancet Oncol. 2021. PMID: 34529930

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

・切除可能I期非小細胞肺がんに対する体幹部定位放射線治療(SBRT, stereotactic body radiotherapy)
・単アーム前向き試験、revised STARS trial

 

<背景>
・以前に報告されたSTARSとROSEL試験のプール解析結果では、手術可能早期非小細胞肺がんに対する手術後と比較して、体幹部定位放射線治療(SABR, stereotactic ablative radiotherapy)後の生存成績が優れていたが、その解析は多くの限界が存在していた。
・今回の研究では revised STARS trial の長期成績を報告する。
・Revised STARS trialでは、体幹部定位放射線治療群を再度集積し、登録症例数を増加させ、同時期に施設に前向きに登録された胸腔鏡下肺葉切除+縦隔リンパ節郭清が行われた患者と、プロトコール特異的な傾向スコアマッチング(PSM, propensity score matching)を用いて比較を行った。

 

<方法>
・今回の単アーム前向き試験はUniversity of Texas MD Anderson Cancer Centerにて行われた。
・適格基準:18歳以上、Zubrod performance status 0-2、新規に診断された組織学的に確認された非小細胞肺がん、N0M0(扁平上皮がん, 腺がん, 大細胞がん または 亜型確定できない非小細胞肺がん [NSCLC not other specified])、主要サイズ3 cm以下。
・今回の試験には以前にプール解析が行われた患者を含めなかった。
体幹部定位放射線治療:(末梢性)54 Gy/3回、(中枢性)50 Gy/4回(肉眼的腫瘍体積に対し同時ブースト 60 Gy)
・主要評価項目:3年全生存(OS, overall survival)。
・傾向スコアマッチングのため、MD Anderson Department of Thoracic and Cardiovascular Surgeryに前向き登録が行われたデータベースのI期非小細胞肺がん患者で、試験が行われた同時期に胸腔鏡下肺葉切除+縦隔リンパ節郭清が行われた患者データを用いた。
体幹部定位放射線治療の手術に対する非劣性:3年全生存率が胸腔鏡下肺葉切除術+縦隔リンパ節郭清術後と比較して12%以上劣らないこと(ハザード比上限 1.965)場合に非劣勢を主張することとした。

 

<結果>
・2015年9月-2017年1月、80例が登録、有効性と安全性の解析が行われた。
・経過観察期間中央値:5.1年(IQR 3.9-5.8)。
・3年全生存割合:91%(95% CI 85-98)、5年全生存割合:87%(79-95)。
体幹部定位放射線治療の忍容性は良好で、Grade 4-5毒性の発生を認めなかった。
・1例(1%)に Grade 3の呼吸困難、Grade 2の肺臓炎、Grade 2の肺線維症を認めた。
重篤な有害イベントは観察されなかった。
・Propensity matchingされた胸腔鏡下肺葉切除術+縦隔リンパ節郭清術が行われた患者群の3年全生存割合:91%(95% CI 85-98)、5年全生存割合:84%(95% CI 76-93)。
体幹部定位放射線治療後の3年全生存割合は、胸腔鏡下肺葉切除+縦隔リンパ節郭清が行われた患者と比較して非劣勢である様子。
・両群の全生存に有意差は認められなかった(多変量解析;ハザード比 0.86, 95% CI 0.45-1.65, p=0.65)

 

<結論>
・手術可能IA期非小細胞肺がんに対する体幹部定位放射線治療後の長期生存成績は、胸腔鏡下肺葉切除術+縦隔リンパ節郭清術後に対して非劣性。
・手術可能なIA期非小細胞肺がんに対する体幹部定位放射線治療は有望な治療ではるものの、集学的な治療が強く推奨される。

 

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