とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

前立腺がんに対する根治治療後 人種による前立腺がんの予後の違い

Würnschimmel C, et al. Int J Urol. 2021. PMID: 34553428

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 

・米国SEER databaseにて、前立腺がんに対する手術または放射線治療後の前立腺がんによる死亡率を人種により違いがあるのかを検討した。
・白人と比較して、アジア系アメリカ人では放射線治療後の前立腺がん死亡率が低く、高リスク前立腺がんではアジア系アメリカ人で手術後の前立腺がんによる死亡率が低かった。
・白人と比較して、アジア系の人種の限局性前立腺がんに対する根治治療後の前立腺がんの予後は比較的良好な様子。

 

前立腺がんに対する放射線治療(外照射)または 根治的前立腺全摘出術後
・人種による治療成績差
・Population-based study (米国 SEER database)

 

<目的>
・限局性前立腺がん患者に対する根治的前立腺全摘除術 または 放射線治療(外照射)後の前立腺がん特異的死亡への人種の影響を評価すること。

 

<方法>
・SEER(Surveillance, Epidemiology and End Results)2004-2016年において、中リスクおよびこうリスクの前立腺がんに対し、根治的前立腺全摘除術または放射線治療(外照射)が施行された患者を同定した。
・白人(151,632例)、ラテン系アメリカ人(20,077例)、アフリカ系アメリカ人(32,550例)、アジア系アメリカ人(11,189例)。

 

<結果>
・白人と比較して、アジア系アメリカ人の中リスク/高リスク限局性前立腺がん患者で、放射線治療(外照射)が行われた患者では、前立腺がん特異的死亡が少なかった(中リスク HR 0.58, P<0.02、高リスク HR 0.70, p<0.02)
・白人と比較して、アジア系アメリカ人の高リスク限局性前立腺がん患者で、根治的前立腺全摘除術が施行された患者では、前立腺がん特異的死亡率が低かった(HR 0.72, p=0.04)、一方、中リスク群では有意な差異を認めなかった(p=0.08)。
・対して、白人と比較して、アフリカ系アメリカ人で、中リスク前立腺がんに対し根治的前立腺全摘除術が施行された患者では、前立腺がん特異的死亡率が高かった(HR 1.36, p=0.01)。
・高リスクに対する根治的前立腺全摘除術後、中リスク/高リスクに対する放射線治療(外照射後)前立腺がん特異的死亡率は、アフリカ系アメリカ人と白人で有意な差異を認めなかった。
・白人とラテン系アメリカ人の比較において、中リスク/高リスク前立腺がんに対する根治的前立腺全摘除術および放射線治療(外照射)後の前立腺がん特異的死亡率に有意差を認めなかった。

 

<結論>
・白人と比較して、アジア系アメリカ人では中リスク/高リスク前立腺がんに対する放射線治療(外照射)後の前立腺がん特異的死亡率は低かった。
・高リスク前立腺がんに対し根治的前立腺全摘除術が施行されたアジア系アメリカ人では、白人と比較して、前立腺がん特異的死亡率が低かった。