とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

【STIMULI trial】小細胞肺がんに対する化学放射線療法後のニボルマブ/イピリムマブ vs. 経過観察

Peters S, et al. Ann Oncol. 2021. PMID: 34562610

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

・STIMULI試験では小細胞肺がんに対する化学放射線療法後のニボルマブ/イピリムマブによる地固め免疫療法と経過観察を比較した。
ニボルマブ/イピリムマブによる地固め療法による無増悪生存や全生存の改善効果は認められず、ニボルマブ/イピリムマブ治療群では重篤な有害事象が60%以上に認めた。
・有害事象に関連して、ニボルマブ/イピリムマブによる地固め免疫療法が早期に中止されることが多く、効果に影響を与えたかもしれない。

 

・限局型小細胞肺がんに対する化学放射線療法後のニボルマブ/イピリムマブ vs. 経過観察

・第2相ランダム化試験、ETOP/IFCT 4-12 STIMULI trial

 

<背景>
・限局型小細胞肺がんに対する標準治療は同時化学放射線療法と予防的全脳照射で、5年全生存率は25-33%程度。

 

<方法>
・STIMULIは第2相ランダム化試験で、化学放射線療法後の経過観察に対する、ニボルマブ/イピリムマブによる地固め療法の優越性を示すことを目的とした。
・地固め免疫療法:4サイクルのニボルマブ(1 mg/kg、3週ごと)+ イピリムマブ(3 mg/kg、3週ごと】、その後ニボルマブ単独治療(240 mg、2週ごと)を12ヶ月間まで。
・集積不良のため症例集積は早期中止された。

 

<結果>
・222例が登録され、153例がランダム化された(ニボルマブ/イピリムマブ群 78例、経過観察群 75例)
・ランダム化された患者の年齢(中央値)62歳、男性 60%、喫煙中 34%、喫煙歴あり 65%、PS 0 31%、PS 1 66%。
・経過観察期間(中央値)22.4ヶ月。
ニボルマブ/イピリムマブ群 40例に無増悪生存イベントを認め、無増悪生存期間(中央値)10.7ヶ月(95% CI 7.0-not estimatable)
・経過観察群 42例に無増悪生存イベントを認め、無増悪生存期間(中央値)14.5ヶ月(95% CI 8.2-not estimatable)
・無増悪生存のハザード比は1.02 (95% CI 0.66-1.58, 2-sided p=0.93)
・2021年6月まで経過観察をアップデートし、観察期間(中央値)35ヶ月
・全生存期間(中央値):ニボルマブ/イピリムマブ群 未到達、経過観察群 32.1ヶ月(95% CI 26.1-not estimatable)(ハザード比 0.95, 95% CI 0.59-1.52, p=0.82)
ニボルマブ/イピリムマブ群において、治療中止までの期間(中央値)1.7ヶ月。
・Grade 3+有害イベントがニボルマブ/イピリムマブ群 62%、経過観察群 25%に認められ、ニボルマブ/イピリムマブ群 4例、経過観察群 1例で致命的となった。

 

<結論>
・STIMULI試験において、限局型小細胞肺がんに対する化学放射線療法後のニボルマブ/イピリムマブによる地固め療法は主要評価項目である無増悪生存の改善を達成できなかった。
・毒性に関連しニボルマブ/イピリムマブの治療を早期に中止せざるをえなかったことが有効性に影響を与えた様子。

 

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