とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

粘膜部悪性黒色腫に対する免疫チェックポイント阻害剤 放射線治療の追加は有用か?

Umeda Y, et al. Eur J Cancer. 2021. PMID: 34563991

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

・粘膜部悪性黒色腫に対し免疫チェックポイント阻害剤による治療が行われた患者において、放射線治療が有効性を改善するかを評価した。
・免疫チェックポイント阻害剤のみで治療された患者と比較して、免疫チェックポイント阻害剤+放射線治療の併用が行われた患者の無増悪生存や全生存の改善効果は認められなかった。
・免疫チェックポイント阻害剤に放射線治療を併用することにより、局所制御や症状の緩和効果はあるかもしれないが、生存期間の延長効果はない様子。

 

・粘膜部悪性黒色腫(mucosal melanoma)に対する抗PD-1抗体、抗PD-1抗体+抗CTLA4抗体 ± 放射線治療
・多施設共同後ろ向き研究、日本

<背景>
・皮膚の悪性黒色腫(メラノーマ)と比較して、粘膜部悪性黒色腫(mucosal melanoma)では免疫チェックポイント阻害剤(ICIs, immune checkpoint inhibitor)の有効性が低い。
放射線治療と免疫チェックポイント阻害剤との併用により粘膜部悪性黒色腫に対する有効性が改善するが、さらなる研究が必要。

<方法>
・225例の抗PD-1抗体 / 抗PD-1抗体+抗CTLA-4抗体により治療が行われた患者を後ろ向きに解析した。
放射線治療+抗PD-1抗体(PD-1+RT)115例、放射線治療+抗PD-L1抗体+抗CTLA4抗体(PD-1+CTLA4+RT)42例、抗PD-1抗体単独(PD-1単独)56例、抗PD-L1+抗CTLA4抗体(PD-1+CTLA4単独)12例。
・治療の有効性を客観的奏効率(ORR, objective response rate)と Kaplan-Meier解析による生存成績により評価を行った。

<結果>
・全身状態(ECOG PS)以外、PD-1群とPD-1+CTLA4群に有意な違いを認めなかった。
・PD-1単独群とPD-1+RT群の比較において、客観的奏効率(26% vs. 27%, p>0.099)、無増悪生存期間中央値(6.2ヶ月 vs. 6.8ヶ月, p=0.63)、全生存期間中央値 19.2ヶ月 vs. 23.1ヶ月(p=0.70)に有意差を認めなかった。
・PD-1+CTLA4単独群とPD-1+CTLA-4+RT群の比較において、客観的奏効率(28% vs. 25%, p=0.62)、無増悪生存期間中央値(5.8ヶ月 vs. 3.5ヶ月, p=0.21)、全生存期間中央値(31.7ヶ月 vs. 19.8ヶ月, p=0.79)に有意差を認めなかった。
・(Cox multivariate analysis)PD-1やPD-1+CTLA4へ放射線治療を追加することによる、無増悪生存や全生存改善効果を認めなかった。

<結論>
・進行期粘膜部悪性黒色腫MUM, mucocal melanoma)に対し、免疫チェックポイント阻害剤による治療が行われた患者において、放射線治療は局所制御を改善し、局所症状を改善する可能性はあるものの、生存成績の延長効果は認められなかった。

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