とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

小児 中枢神経腫瘍/頭頸部腫瘍に対する放射線(± 化学療法)後の聴力障害

Keilty D, et al. J Clin Oncol. 2021. PMID: 34570616pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

・中枢神経腫瘍/頭頸部腫瘍に対し放射線治療(± 化学療法)が施行された患児の聴力への影響を評価した。
・蝸牛へ照射された放射線治療の線量や投与されたプラチナ製剤(シスプラチンやカルボプラチン)の用量が多いほど聴力障害の発生リスクが高く、5年以降にも聴力障害は増加していた。
・小児に対する放射線治療では、晩期の聴力障害リスクを低減するために、蝸牛への照射線量をできるだけ低く抑える必要がある。

 

・小児 中枢神経腫瘍/頭頸部腫瘍に対する放射線治療および化学療法後の聴力障害

<目的>
・小児の中枢神経腫瘍や頭頸部腫瘍に対する治療後の聴力障害(HL, hearing loss)は重篤な二次的影響です。
・今回の研究の目的は聴力障害の発生割合やリスク因子を評価することです。

<対象と方法>
・中枢神経腫瘍 または 頭頸部腫瘍に対し、放射線治療 ± 化学療法が行われた171例を評価した。
・International Society of Pediatric Oncology-Boston gradesにて、2,420回の聴力検査を施行した。

<結果>
・蝸牛の平均線量(odds ratio [OR] 1.04 per Gy, p<0.001)、放射線治療からの期間(OR 1.21 per year, p<0.001)、シスプラチン投与量(OR 1.48 per 100 mg/m2, p<0.001)、カルボプラチン投与量(OR 1.41 per 1000 mg/m2, p=0.002)が 聴力障害のInternational Society of Pediatric Oncology-Boston grade上昇と関連していた。
放射線治療とシスプラチン(interaction term p=0.53)、カルボプラチン(interaction term p=0.85)併用による相乗効果は認められなかった。
・蝸牛の平均線量が30 Gyを超えた場合には、5年時点での高周波数帯域(high-frequency , >4kHz)の聴力障害の累積発生割合は50%を超えた。
・全ての周波数帯域の聴力障害は、放射線治療後5年以降にも増加傾向がみられた。

<結論>
放射線治療および化学療法による治療が行われた小児では聴力障害が発生する頻度は高く、経時的に増加傾向が見られた。
・シスプラチンの投与量、カルボプラチンの投与および蝸牛の平均線量が聴力障害と関連していた。
・聴力障害を低減するため、蝸牛の平均線量を30Gy以下にすることを低減する。プラチナ製剤による化学療法が行われる場合には、蝸牛の平均線量を20-25 Gyまで低減することも考慮しても良いかもしれない。

 

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