とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

限局性前立腺がんに対する根治治療が治療後の収入減少へ与える影響

Minamitani M, et al. PLoS One. 2021. PMID: 34591929

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

・限局性の前立腺がんに対する根治治療(放射線治療と手術)が、治療後の収入へ与える影響を評価した。
・自営業者や非正規雇用者では、手術(前立腺全摘除術)と比較して、放射線治療を受けた患者で治療後の年収の減少が少ない傾向がみられた(12% vs. 42%)。
・自営業者や非正規雇用者では、限局性前立腺がんに対する初期治療として放射線治療を選択した場合に、治療後の収入減少リスクが比較的低い様子。

 

・限局性前立腺がんに対する根治治療法による年収への影響
・Web-based pilot study、日本

<背景>
・日本におけるがん治療の患者の雇用状態への影響に関する情報は限定的です。

<目的>
・Web-based surveyを行うことにより、前立腺がんに対する根治的放射線治療後と根治的前立腺全摘除術後の年収の変化を調査し、年収減少リスク因子を同定した。

<結果>
・78例に対し放射線治療が施行されており、128例に対し前立腺全摘除術が施行されていた。
・自営業者や非正規雇用者では、治療後の収入の減少率が放射線治療で少ない傾向がみられた(12% vs. 42%, p=0.074)。
・多変量ロジスティク解析において、自営業者や非正規雇用者では前立腺がんに対する初期治療が治療後の収入減少のリスク因子であることが示唆された。
放射線治療は、治療後の収入減少が少ないことと関連していた(odds ratio 0.22, 95% CI 0.052-0.95, p=0.042)

<結論>
・限局性前立腺がんに対する根治治療施行例において、自営業者や非正規雇用者では、放射線治療は治療後の収入減少リスクが低かった。