とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

【NIVES trial】遠隔転移を有する腎細胞がん ニボルマブへ体幹部定位放射線治療を追加することによるベネフィットは?

Masini C, et al. Eur Urol. 2021. PMID: 34602312

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

・NIVES Trialでは、腎細胞がんに対するニボルマブ治療へ体幹部定位放射線治療を追加することにより、客観的奏効率を20%から40%へ改善できるかが検討された。
ニボルマブ体幹部定位放射線治療後の客観的奏効率は18%で、明らかな奏効率の改善は認められなかった。
・現時点では、ニボルマブによる免疫療法へ体幹部定位放射線治療を追加することによるベネフィットははっきりせず、今後はオリゴ転移(少数転移)/少数増悪がみられる腎細胞がん患者で検討がなされる必要がある。

 

・治療歴のある遠隔転移を有する腎細胞がん患者に対する、体幹部定位放射線治療(SBRT, stereotactic body radiotherapy)とニボルマブ(Nivolumab)の併用療法
・第2相試験、NIVES、イタリア

 

<背景>
・遠隔転移を有する、治療歴のある腎細胞がん(RCC, renal cell carcinoma)患者において、ニボルマブによる治療は全生存(OS, overall survival)におけるベネフィットが存在する。
・遠隔転移を有する腎細胞がんにおける体幹部定位放射線治療の役割に関しては定まっていない。

<目的>
・遠隔転移を有する腎細胞がん患者において、2次治療 / 3次治療におけるニボルマブ体幹部定位放射線治療併用の有効性と安全性を評価すること。

<対象と方法>
ニボルマブ投与開始より、体幹部定位放射線治療(30 Gy/3回/7日間)を施行した。
ニボルマブは240 mg/day、14日ごと、6ヶ月間投与し、奏効例に対しては480 mg、4週ごと投与を継続した。
ニボルマブ体幹部定位放射線治療の併用により、客観的奏効割合がニボルマブ単独の従来の25%から40%へ改善すると仮説をたてた。
・副次評価項目:無増悪生存(PFS, progression-free survival)、照射部 / 非照射部の疾患制御割合(DCR, disease control rate)、安全性

<結果>
・2017年7月-2019年3月、69例が登録された。
・客観的奏効割合:17%、疾患制御割合:55%。
・無増悪生存期間(中央値)5.6ヶ月(95% CI 2.9-7.1)、全生存期間(中央値)20ヶ月(95% CI 17-未到達)
・経過観察期間(中央値)1.5年、23例が死亡。
・奏効までの期間(time to response)(中央値)2.8ヶ月、奏効期間(中央値)14ヶ月
・新たな安全性の懸念は認められなかった。

<結論>
・治療歴のある遠隔転移を有する腎細胞がんにおいて、ニボルマブ体幹部定位放射線治療(SBRT)を併用することにより追加のベネフィットが存在するという十分なエビデンスは確認できなかった。
・しかしながら、オリゴ転移(少数転移)や少数増悪病変を有する患者においてさらに評価を行う必要がある。

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