とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

乳がんに対する乳房切除術+乳房再建術後の放射線治療 寡分割照射と通常分割照射で乳房の合併症に違いはあるか?

Kim DY,  et al. Int J Radiat Oncol BIol Phys. 2021. PMID: 34610389

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

乳がんに対する乳房切除術+乳房再建術が施行された患者に対する乳房切除術後放射線治療(PMRT)において、寡分割照射と通常分割照射で治療関連合併症に違いがあるかを検討した。
・2009-2018年に乳房切除術+乳房再建術が行われた396例を解析したところ、寡分割照射と通常分割照射後の合併症の発生率に差を認めなかった。
・一次再建が行われた患者、二次再建が行われた患者、いずれにおいても差は認められなかった。

 

乳がんに対する乳房切除術+乳房再建術後の術後放射線治療(PMRT, postmastectomy radiotherapy);寡分割照射 vs. 通常分割照射
・後ろ向き研究、韓国

<目的>
乳がんに対する乳房切除術+乳房再建術後の術後放射線治療(PMRT, postmastectomy radiotherapy)において、寡分割照射と通常分割照射に伴う乳房関連合併症(breast-related complications)を比較すること。

<方法>
・2009-2018年、乳がんに対し乳房切除術+乳房再建術が行われた396例を後ろ向きに解析した。
・全例に対し通常分割照射 または 寡分割照射による乳房切除術後放射線治療(PMRT, postmastectomy radiotherapy)が行われていた。
・乳房再建術が行われた時期(一次再建 と 二次再建)に分けて解析を行った。
・二次再建が行われた患者では、PMRT前に再建が行われた患者のみを解析した。
・乳房合併症(major breast complications):乳房に関連した毒性で、放射線治療後に再手術や再入院が必要となったものと定義。

<結果>
・経過観察期間(中央値)35.3ヶ月(8.8-122.7ヶ月)
・267例に対し一次再建、129例に対し二次再建が行われていた。
・一次再建が行われた患者群において、91例に対し通常分割照射、176例に対し寡分割照射が行われていた。
・乳房合併症発生割合は、寡分割照射後と通常分割照射後で有意差を認めなかった。
・寡分割照射による創部の感染や離開の増加は認められなかった。
・通常分割照射と比較して、寡分割照射後の拘縮の頻度が低かった。
・二次再建が行われた患者群において、48例に対し通常分割照射、81例に対し寡分割照射が行われていた。
・乳房合併症発生割合は寡分割照射後と通常分割照射後で有意差を認めなかった。
・乳房再建から術後放射線治療までの期間が10ヶ月以上の患者で、乳房合併症の発生割合が低かった。

<結論>
乳がんに対する乳房切除術、乳房再建術施行例に対する術後放射線治療(PMRT, postmastectomy radiotherapy)施行例において、再建時期(一次再建、二次再建)によらず、通常分割照射と寡分割照射後の乳房合併症の発生割合は同等である様子。

<関連>

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