とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

乳がんに対する術後放射線治療後の放射線肺臓炎の発生率と予測因子

Karlsen J, et al. Acta Oncol. 2021. PMID: 34618657

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

乳がんに対する術後放射線治療後の放射線肺臓炎 / 放射線肺線維症の発生率や予測因子の検討が前向きコホート研究にて行われました。
・12ヶ月以内の画像的な放射線肺臓炎発生率は89%、12ヶ月以内の臨床的な放射線肺臓炎の発生率は16%でした。
・3ヶ月時点での臨床的な放射線肺臓炎は乳房切除術後の患者に多く、12ヶ月時点での臨床的な肺線維症はホルモン療法(内分泌療法)が行われた患者さんに多く認められました。

 

乳がんに対する放射線治療後の肺臓炎および線維化
・前向きコホート研究、ノルウェー

背景>
乳がんに対する放射線治療後、放射線肺臓炎(RP, radiation pneumonitis)および 放射線肺線維症(RF, radiation fibrosis)は比較的頻度の高い副作用。
・しかしながら、放射線肺臓炎や肺線維症の頻度に関してはさまざまな報告があります。
・今回の研究では放射線肺臓炎/肺線維症の頻度を評価し、放射線肺臓炎/肺線維症の発生を予測する治療関連因子の検討を行った。
・さらに放射線治療後1年間の医師評価 / 患者報告による呼吸器症状を評価した。

<対象と方法>
・2007-2008年、乳がんに対する術後放射線治療が施行された250例を今回の前向きコホート研究に登録した。
放射線治療前、治療後3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月に high-resolution CTを撮像した。
・Standard quality of life 質問表を用いて、患者報告による症状を評価した。
・Logistic regression analysesにより、画像的な放射線肺臓炎(rRP, radiological RP)、臨床的放射線肺臓炎(cRP, clinical RP)、画像的放射線肺線維症(rRF, radiological RF)、臨床的放射線肺線維症(cRF, clinical RF)を予測する治療関連因子を検討した。

<結果>
・画像的放射線肺臓炎発生割合:3ヶ月 79%、12ヶ月 89%。
・臨床的放射線肺臓炎発生割合:3ヶ月 19%、12ヶ月 16%。
放射線肺臓炎はいずれも grade 1 と判定された。
・多変量解析にて、乳房切除術と3ヶ月時点での臨床的肺臓炎(OR 2.48, p=0.03)、6ヶ月時点での臨床的肺線維症との関連が認められた。
・同側肺のV20 Gy(OR 1.06, p=0.0003)、V30 Gy(OR 1.10, p=0.001)、平均肺線量(MLD, mean lung dose)(OR 1.03, p=0.01)と6ヶ月時点での画像的放射線肺臓炎との関連が認められた。
・ホルモン療法(内分泌療法)と12ヶ月時点での臨床的肺線維症との関連が認められた(OR  2.48, p=0.02)
・治療前と比較して、3ヶ月時点で医師評価にて呼吸困難が多く認められ(p=0.003)、患者報告症状では3ヶ月および12ヶ月時点で軽度の呼吸困難(little dyspnea)が増加した。

<結論>
乳がんに対する放射線治療後1年以内に放射線肺臓炎および放射線肺線維症が多く認められた。乳房切除術後では3ヶ月時点での臨床的放射線肺臓炎の発生を予測した。
・肺V20 Gy、V30 Gy、D 25、平均肺線量(MLD)が6ヶ月時点の画像的放射線肺臓炎、内分泌療法は12ヶ月時点での臨床的肺線維症を予測した。
・医師評価による呼吸困難と患者報告による呼吸困難には異なりが認められた。

<関連>

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