とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

限局型小細胞肺がん、予防的全脳照射(PCI)の有効性


 

Liu J et al. Acta Oncol. 2023. PMID: 37010509

Survival benefit of prophylactic cranial irradiation in limited-stage small-cell lung cancer in modern magnetic resonance imaging staging: a systematic review and meta-analysis

 

・後ろ向き観察研究のシステマティックレビュー/メタアナリシス

・15研究を同定、限局型小細胞肺がん(LS-SCLC)患者 2,797例を組み入れて解析

・1,391例に対して予防的全脳照射(PCI)が施行されていた

・予防的全脳照射(PCI)は良好な全生存と有意に相関(HR 0.64)

・サブグループ解析/感度解析結果から、予防的全脳照射(PCI)の全生存への影響は、原発巣に対する治療、完全奏功の割合、年齢、予防的全脳照射(PCI)の照射線量、研究の報告の年には寄らない様子

原発巣に対し胸部放射線治療が行われた8研究の解析(1,588例)にて、予防的全脳照射が行われた患者の全生存が良好であった(HR 0.69)

 全生存割合:

  PCI施行群:2年 59%、3年 42%、5年 26%

  PCI非施行群:2年 42%、3年 29%、5年 19%

原発巣に対し根治手術が行われた2研究(339例)の解析でも、予防的全脳照射(PCI)が施行された患者の全生存が良好であった(HR 0.59)

 全生存割合:

  PCI施行群:2年 85%、3年 70%、5年 50%

  PCI非施行群:2年 71%、3年 56%、5年 39%

 

 


 

Chen Y et al. Respir Res. 2022. PMID: 36184624

Prophylactic cranial irradiation (PCI) versus active surveillance in patients with limited-stage small cell lung cancer: a retrospective, multicentre study

 

・後ろ向き研究、中国

・限局型小細胞肺がん(LS-SCLC)で、経過観察群と予防的全脳照射群(PCI)の生存成績を比較

<結論>経過観察と比較して、予防的全脳照射(PCI)は脳転移の発生リスクを低下させるものの、全生存の有意な改善効果は認められなかった。

 

・対象:2009年6月-2019年6月、限局型小細胞肺がんに対する化学放射線療法後に良好な奏効が得られた1,068例

・440例に対し予防的全脳照射(PCI)が施行され、628例は経過観察が行われていた

・合計648例をマッチさせて比較

・経過観察期間の中央値は64.5ヶ月で、予防的全脳照射(PCI)が行われた患者群で脳転移の発生リスクが低かった。

・3年累積脳転移発生割合は、予防的全脳照射群(PCI)28.2%、経過観察群 38.5%(Gray's p=0.002)

・しかしながら、予防的全脳照射(PCI)による明らかな全生存の改善効果は認められなかった

・全生存期間の中央値は、予防的全脳照射群(PCI)35.8ヶ月、経過観察群 32ヶ月

・多変量解析:病期、化学放射線療法のシーケンス、化学放射線療法への奏効が脳転移および全生存の予後因子であった