とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

胸腺がんに対する完全切除+術後放射線治療後の再発形式と再発リスク

Gao Y et al. Radiother Oncol. 2022. PMID:36481384

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov


<背景と目的>
・目的:胸腺がんに対する完全切除+術後放射線治療(PORT, postoperative radiotherapy)後の再発形式と再発のリスク因子を評価すること。


<対象と方法>
・2003年から2020年に胸腺がんに対して完全切除+術後放射線治療(PORT)が行われた127例の患者を遡及的に解析した。


<結果>
・全例で腫瘍床に対する照射が行われていた。
・経過観察期の中央値は64ヶ月。
・51例(40%)に再発が認められた。
・5年無病生存率:59%、5年全生存率:85%。
遠隔再発 32%(42例)、胸膜再発 22%(28例)、局所領域再発 15%(19例)
・局所領域再発のうち、照射野内再発が2%(3例)、辺縁部の再発が1%(1例)、照射野外の再発が7%(9例)、照射野内と照射野外の同時再発が2%(2例)、辺縁部と照射野外の再発が2%(2例)に認められ、照射野との関連が不明な患者が2%(2例)であった。
・多変量解析にて、Masaoka stage (HR 3.88, p=0.000)および アジュバント化学療法(HR 0.47, p=0.015)が無病生存の関連因子であった。


<結論>
胸腺がんに対する完全切除+術後放射線治療(PORT)後の再発は主に遠隔転移再発であった。
Masaoka stage および アジュバント化学療法が無病生存(DFS)の予測因子
局所領域再発リスクは比較的低いことから、胸腺がんに対する完全切除術後の照射範囲としては術後床のみで十分

局所進行食道がんに対する術前(ネオアジュバント)治療 ー 化学放射線療法 vs. 化学療法 ー

Tang H et al. Ann Oncol. 2022. PMID: 36400384

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

<背景>
・局所進行食道がんにおいてはネオアジュバント(術前)治療が推奨されている。
・しかしながら適切なネオアジュバント治療法に関しては不明。
・局所進行食道扁平上皮がん(ESCC, esophageal squamous cell carcinoma)に対する手術(MIE, minimally invasive esophagectomy)前の術前(ネオアジュバント)治療としての化学放射線療法(nCRT, neoadjuvant chemoradiotherapy)と化学療法(nCT, neoadjuvant chemotherapy)の有効性を比較した。


<対象と方法>
・適格基準:食道扁平上皮がん(cT3-4aN0-1M0)
・(1:1)の割合で化学放射線療法群(nCRT)と化学療法群(nCT)群にランダム化を行った。
・化学療法のレジメンはいずれの群でもシスプラチン+パクリタキセル
・化学放射線療法群(nCRT)での放射線治療の線量分割は40Gy/20回。
・化学放射線療法群ではシスプラチン+パクリタキセルとを放射線治療に同時併用した。
・ネオアジュバント治療後に手術(MIE)を施行した。
主要評価項目:3年全生存率


<結果>
・合計で264例を対象としてintention-to-treat解析を行った。
・2021年11月30日までに121例が死亡した。
・経過観察期間の中央値は43.9ヶ月(IQR 36.6-49.3ヶ月)
・化学放射線療法群(nCRT)と化学療法群(nCRT)の比較において、全生存成績は同等の結果であった(HR 0.82, 95% CI 0.58-1.18, p=0.28)。
3年全生存率は、化学放射線療法群(nCRT) 64.1%(95% CI 56.4-72.9%)、化学療法群(nCT)54.9%(95% CI 47-64.2%)
・全生存期間の中央値は、化学放射線療法群(nCRT)で未到達、化学療法群(nCT)で43.2ヶ月。
・無増悪生存も両群間に明らかな差を認めなかった(HR 1.07, 95% CI 0.70-1.60, p=0.75)。
・無増悪生存期間の中央値は、化学放射線療法群(nCRT) 46.5ヶ月、化学療法群(nCT)34.1ヶ月。
・3年無増悪生存率は、化学放射線療法群(nCRT)54.3%(95% CI 46.3-63.6)、化学療法群(nCT)49.8%(95% CI 41.9-59.2)。
・病理学的完全奏効率(pCR, pathological complete response)は化学放射線療法群(nCRT)で良好であった(27.7% vs. 2.9%, p<0.001)。
・化学放射線療法群(nCRT)で再発リスクが低い傾向が認められた(p=0.063)が、再発形式は同様のものであった(p=0.802)。


<結論>
・食道扁平上皮がん(cT3-4aN0-1M0)に対する手術(MIE)施行例において、ネオアジュバント化学療法(nCT)と比較して、ネオアジュバント化学放射線療法(nCRT)による有意な全生存の改善効果は認められなかった

腋窩ウェブ症候群(AWS, axillary web syndrome)

 

www.breastcancer.org

腋窩ウェブ症候群(AWS

腋窩ウェブ症候群(AWS, axillary web syndrome)(索状物 [cording]としても知られている)は、センチネルリンパ節生検(SLNB, sentinel lymph node biopsy)や腋窩リンパ節郭清(ALND, axillary lymph node dissection)の副作用として発生することがあります。
センチネルリンパ節生検(SLND)では数個の、腋窩リンパ節郭清(ALND)では多数の腋窩リンパ節の摘出が行われます。
・多くの乳がんの患者では少なくともこれらのうちの1つの手術を行う必要がります。
・がんを摘出するための胸部の手術に伴う創部組織が、索状物(cording)の形成に関係する可能性もあります。

腋窩ウェブ症候群(AWS)を発症した場合、太い紐状の構造を上肢の内側に認めたり、感じるようになるようになります。
リンパ浮腫を治療する医療従事者は、これらの構造物を「cording」と呼ぶこともあります。
・もし索状物を見つけたり感じたりした場合や、疼痛や固さを感じる場合には医療従事者に知らせることで、問題解決につながります。
・これらの索状物(cords)は、何かの際に腕を肩の高さや頭の上に上げた場合に発見されることが多いです。
・索状物(cording)の形成は手術から数日あるいは数週間経過後に認めらることが多いものの、手術から数ヶ月後に認められることもあります。

腋窩ウェブ症候群(AWS)では、1本の太い索状物として認めらることも、上肢に複数の何本かの細い索状物として認められることもあります。
・これらの索状物は通常は腋窩部の創部近くから始まり、上肢の内側や肘の内側に拡がっていきます。
・場合によっては、これらの索状物は手のひらまで拡がっていくこともあります。
・また人によっては上肢方向(のみ)ではなく、胸壁に拡がっていくこともあります。

・索状物には痛みを伴う傾向があり、上肢が重たく感じ肩より上に腕を伸ばしたり、十分肘を伸ばせない状態となることがあります。
・この痛みや関節の可動域制限のために、日常生活に影響してしまうことになります。
腋窩ウェブ症候群(AWS)は、特に放射線治療の開始前や治療期間中に発生した場合に特に問題となります(放射線治療を行うためには両側の上肢を挙上させる必要があるが、腋窩ウェブ症候群を発症するとこれが難しくなります)。

・どのようにして腋窩ウェブ症候群(AWS)/索状物の形成が起こるのかに関しては現在研究者たちによる研究が行われています。
・一部の専門家は、腋窩部や胸部に対する手術は、血管やリンパ管、神経を包む結合組織を損傷すると考えています。
・この損傷により炎症や瘢痕化が起こり、結果として組織の硬化が起こります。
・これらの硬化は結合組織の線維に沿って拡がり、索状物(cords)が形成されていきます。
・しかしながら、どのようにして索状物(cords)が形成されるかの過程を知るためには、さらなる研究が必要です。

・手術後にどの程度の患者に腋窩ウェブ症候群(AWS)が発生するかはまだはっきりとは分かっていません。
・これまでに行われた研究はまだ少なく、これらの研究の多くは少数例での検討にとどまっています。
・ある研究ではセンチネルリンパ節生検(SLNB)が行われた女性の20%に腋窩ウェブ症候群(AWS)が発生したと報告されています。
腋窩リンパ節郭清(ALND)後の報告では、報告により腋窩ウェブ症候群(AWS)の発生率は6~72%とさまざまな結果が報告されています。
・多くの専門家はセンチネルリンパ節生検(SLNB)と比べて、腋窩リンパ節郭清(ALND)後に腋窩ウェブ症候群(AWS)が問題となることが多いと考えています(リンパ節生検 [SLNB] と比較して腋窩リンパ節郭清 [ALND] ではより多くのリンパ節を摘出するため、体に対してより侵襲性の高い手術となる傾向があります)。


腋窩ウェブ症候群(AWS)のマネージメント

・もし腋窩ウェブ症候群(AWS)による症状がある場合には、担当医に対して乳がんリハビリを専門的に行っている理学療法士や看護師、専門医への紹介を相談してください。
腋窩ウェブ症候群(AWS)の患者を多く診ている人を探すのが良いと思われます。
・状態が落ち着くのを待っているのは良い考えではありません。
腋窩ウェブ症候群(AWS)の索状物(cords)による痛みにより、腕や肩を動かすのを避けてしまい、機能や可動性に重い問題を残す可能性があります。
・専門家の指導のもとで、上肢を動かしたりストレッチを行うことが状況の改善と疼痛の消失において最善の方法です。

・療法士と一緒にあなたにあった治療プランを作成することができます。

ストレッチと柔軟性体操(stretching and flexibility exercises)
・療法士の指導により、やさしく索状物(cords)を伸ばす体操の方法を学ぶことができ、これにより痛みなく関節の可動域を広げることができるようになります。
・療法士はまた家での体操の方法を教えてくれますし、どのような頻度で行うべきかも教えてくれます。

手技療法(manual therapy)
・療法士はやさしく索状構造に対してマッサージを行うこともあります。
・手技療法では、伸ばした腕を上腕から前腕にかけて圧迫を行います。
・この手法によって索状物が切れたり壊れたりする場合があり、これが起こった際には索状物が切れた音が聞こえることもあります。
・これには通常痛みは伴わず、痛みなく動かせる関節の可動域が改善します。

温熱療法(moist heat)
・療法士はまた、治療の一部として温めたパッドを索状物に直接あてることがあります。
・しかしながら、この温熱療法を行う場合には注意が必要です。
・長時間温めた場合にはリンパの産生が増加するため、リンパ浮腫を来す可能性があります。
・もし療法士が温熱療法をあなたに勧めた場合には、その療法士が本当に腋窩ウェブ症候群(AWS)の治療経験が豊富であるかどうかを確認する必要があります。

鎮痛薬(pain medication)
・もし痛みのために上肢のストレッチが行えない場合には、NSAIDなどの鎮痛薬を内服する必要があるかもしれません。
・しかしながら、覚えておいて頂きたいのは疼痛に対する最良の治療法はストレッチであり、これによって腋窩ウェブ症候群(AWS)の状況の改善が図れます。

低出力レーザー(low-level laser therapy)
・小型デバイスによる低出力レーザーを皮膚に直接あてて、治療を行うこともあります。
・レーザー治療により硬くなった創部組織の破壊の一助となる可能性があります。

・鎮痛薬による治療を除いて、これらの治療法は索状物(cord)を形作っている固い創部組織を緩めることに焦点をあてたものとなっている。
・ある部位の索状物(cords)が緩くなった場合、他の部位が固くなったと感じることもあるかもしれません。
・これは腋窩ウェブ症候群(AWS)が悪化したわけではなく、他の場所の創部組織がまだ改善していない(stuck)ためです。
・例えば、上腕や肘の索状物(cord)が緩んだ場合、疼痛や可動域の改善がみられますが、手首や前腕の固さを感じることになる場合があります。
・「索状物(cord)のことを釣り竿にからまった糸のようなもの」とある専門家は患者に対して説明を行っています。
・「この場合、もしある部分の問題の場所を緩めることができた場合、まだ問題のある他の部位に固さが拡がることもある」

・幸い、腋窩ウェブ症候群(AWS)は大半の患者では、何回かの治療セッションの後、あるいは数ヶ月以内に軽快します。
・数ヶ月以上にわたり関節の可動域制限が続く場合もありますが、典型的ではありません。
腋窩ウェブ症候群(AWS)は一度改善した場合でも、その後に再燃することもあります。
・しかしながら、腋窩ウェブ症候群(AWS)は一過性のイベントで、長期間にわたり問題となるわけではありません。
・索状物(cords)が壊れたのちにどうなっていくのか、専門家でも依然として理解できているわけではありません。
・一部の専門家は単純に体に再度吸収されていくのだと考えていますが、他の専門家は索状物(cords)に何が起こっているのかは分からないと言っています。

腋窩ウェブ症候群(AWS)が改善した後も、ストレッチや柔軟体操を続けることは良いことです。
・ストレッチや柔軟体操を行うことで、放射線治療などの追加治療の期間に関節や軟部組織の可動性を保ったり、手術からの開腹にも有効です。

腋窩ウェブ症候群(AWS)の発生が、後の上肢のリンパ浮腫のリスク上昇につながるかどうかはよく分かっていません。
リンパ浮腫では上肢/手のリンパ液の過剰な産生により腫脹を来します。
リンパ浮腫が起こってしまった場合には経時的な治療が必要となる問題となります。
・一部の専門家は、腋窩ウェブ症候群(AWS)はリンパ系の障害の徴候であると考え、後のリンパ浮腫のリスク上昇を示唆していると考えています。
・2006 International Consensus Statement on managing lymphedemaでは、腋窩ウェブ症候群(AWS)がリンパ浮腫のリスク因子として挙げられていました。
・しかしながら、本当に腋窩ウェブ症候群(AWS)がリンパ浮腫と関連しているのかに関しては十分な研究が行われていません。
・もし腋窩ウェブ症候群(AWS)を認めた場合でも、必ずしも通常より後のリンパ浮腫の発生リスクが高いと考えられるというわけではありません。

腋窩リンパ節郭清(ALND)が行われた患者では、腋窩ウェブ症候群(AWS)を発症の有無によらず、リンパ浮腫の発生リスクがあることが知られています。
・そのため、リンパ浮腫の発生リスクを最小限とするためにリンパ浮腫のリスク低減のガイドラインに従うことが大切だと思われます。

乳がんに対する術後放射線治療後の放射線肺臓炎の発生率と予測因子

Karlsen J, et al. Acta Oncol. 2021. PMID: 34618657

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

乳がんに対する術後放射線治療後の放射線肺臓炎 / 放射線肺線維症の発生率や予測因子の検討が前向きコホート研究にて行われました。
・12ヶ月以内の画像的な放射線肺臓炎発生率は89%、12ヶ月以内の臨床的な放射線肺臓炎の発生率は16%でした。
・3ヶ月時点での臨床的な放射線肺臓炎は乳房切除術後の患者に多く、12ヶ月時点での臨床的な肺線維症はホルモン療法(内分泌療法)が行われた患者さんに多く認められました。

 

乳がんに対する放射線治療後の肺臓炎および線維化
・前向きコホート研究、ノルウェー

背景>
乳がんに対する放射線治療後、放射線肺臓炎(RP, radiation pneumonitis)および 放射線肺線維症(RF, radiation fibrosis)は比較的頻度の高い副作用。
・しかしながら、放射線肺臓炎や肺線維症の頻度に関してはさまざまな報告があります。
・今回の研究では放射線肺臓炎/肺線維症の頻度を評価し、放射線肺臓炎/肺線維症の発生を予測する治療関連因子の検討を行った。
・さらに放射線治療後1年間の医師評価 / 患者報告による呼吸器症状を評価した。

<対象と方法>
・2007-2008年、乳がんに対する術後放射線治療が施行された250例を今回の前向きコホート研究に登録した。
放射線治療前、治療後3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月に high-resolution CTを撮像した。
・Standard quality of life 質問表を用いて、患者報告による症状を評価した。
・Logistic regression analysesにより、画像的な放射線肺臓炎(rRP, radiological RP)、臨床的放射線肺臓炎(cRP, clinical RP)、画像的放射線肺線維症(rRF, radiological RF)、臨床的放射線肺線維症(cRF, clinical RF)を予測する治療関連因子を検討した。

<結果>
・画像的放射線肺臓炎発生割合:3ヶ月 79%、12ヶ月 89%。
・臨床的放射線肺臓炎発生割合:3ヶ月 19%、12ヶ月 16%。
放射線肺臓炎はいずれも grade 1 と判定された。
・多変量解析にて、乳房切除術と3ヶ月時点での臨床的肺臓炎(OR 2.48, p=0.03)、6ヶ月時点での臨床的肺線維症との関連が認められた。
・同側肺のV20 Gy(OR 1.06, p=0.0003)、V30 Gy(OR 1.10, p=0.001)、平均肺線量(MLD, mean lung dose)(OR 1.03, p=0.01)と6ヶ月時点での画像的放射線肺臓炎との関連が認められた。
・ホルモン療法(内分泌療法)と12ヶ月時点での臨床的肺線維症との関連が認められた(OR  2.48, p=0.02)
・治療前と比較して、3ヶ月時点で医師評価にて呼吸困難が多く認められ(p=0.003)、患者報告症状では3ヶ月および12ヶ月時点で軽度の呼吸困難(little dyspnea)が増加した。

<結論>
乳がんに対する放射線治療後1年以内に放射線肺臓炎および放射線肺線維症が多く認められた。乳房切除術後では3ヶ月時点での臨床的放射線肺臓炎の発生を予測した。
・肺V20 Gy、V30 Gy、D 25、平均肺線量(MLD)が6ヶ月時点の画像的放射線肺臓炎、内分泌療法は12ヶ月時点での臨床的肺線維症を予測した。
・医師評価による呼吸困難と患者報告による呼吸困難には異なりが認められた。

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乳がんに対する乳房切除術+乳房再建術後の放射線治療 寡分割照射と通常分割照射で乳房の合併症に違いはあるか?

Kim DY,  et al. Int J Radiat Oncol BIol Phys. 2021. PMID: 34610389

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

乳がんに対する乳房切除術+乳房再建術が施行された患者に対する乳房切除術後放射線治療(PMRT)において、寡分割照射と通常分割照射で治療関連合併症に違いがあるかを検討した。
・2009-2018年に乳房切除術+乳房再建術が行われた396例を解析したところ、寡分割照射と通常分割照射後の合併症の発生率に差を認めなかった。
・一次再建が行われた患者、二次再建が行われた患者、いずれにおいても差は認められなかった。

 

乳がんに対する乳房切除術+乳房再建術後の術後放射線治療(PMRT, postmastectomy radiotherapy);寡分割照射 vs. 通常分割照射
・後ろ向き研究、韓国

<目的>
乳がんに対する乳房切除術+乳房再建術後の術後放射線治療(PMRT, postmastectomy radiotherapy)において、寡分割照射と通常分割照射に伴う乳房関連合併症(breast-related complications)を比較すること。

<方法>
・2009-2018年、乳がんに対し乳房切除術+乳房再建術が行われた396例を後ろ向きに解析した。
・全例に対し通常分割照射 または 寡分割照射による乳房切除術後放射線治療(PMRT, postmastectomy radiotherapy)が行われていた。
・乳房再建術が行われた時期(一次再建 と 二次再建)に分けて解析を行った。
・二次再建が行われた患者では、PMRT前に再建が行われた患者のみを解析した。
・乳房合併症(major breast complications):乳房に関連した毒性で、放射線治療後に再手術や再入院が必要となったものと定義。

<結果>
・経過観察期間(中央値)35.3ヶ月(8.8-122.7ヶ月)
・267例に対し一次再建、129例に対し二次再建が行われていた。
・一次再建が行われた患者群において、91例に対し通常分割照射、176例に対し寡分割照射が行われていた。
・乳房合併症発生割合は、寡分割照射後と通常分割照射後で有意差を認めなかった。
・寡分割照射による創部の感染や離開の増加は認められなかった。
・通常分割照射と比較して、寡分割照射後の拘縮の頻度が低かった。
・二次再建が行われた患者群において、48例に対し通常分割照射、81例に対し寡分割照射が行われていた。
・乳房合併症発生割合は寡分割照射後と通常分割照射後で有意差を認めなかった。
・乳房再建から術後放射線治療までの期間が10ヶ月以上の患者で、乳房合併症の発生割合が低かった。

<結論>
乳がんに対する乳房切除術、乳房再建術施行例に対する術後放射線治療(PMRT, postmastectomy radiotherapy)施行例において、再建時期(一次再建、二次再建)によらず、通常分割照射と寡分割照射後の乳房合併症の発生割合は同等である様子。

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子宮体がんに対する術後放射線治療 強度変調放射線治療と3次元原体照射で副作用に違いはあるか?

Wortman BG, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2021. PMID: 34610387

 

・子宮体がんに対する術後放射線治療放射線治療技術と治療関連毒性

・背景:放射線治療技術は3次元原体照射(3D-CRT, 3-dimensional conformal radiotherapy)から強度変調放射線治療(IMRT, intensity modulated radiotherapy)へと発達してきており、周囲の正常組織をより避けることが可能となってきている。

・今回の解析では、高リス

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

・子宮体がんに対する術後放射線治療において、3次元原体照射と強度変調放射線治療で治療関連有害事象に違いがあるか、PORTEC-3試験に登録された患者データをもとに解析を行った。
・3次元原体照射と比較して、強度変調放射線治療で治療された患者でGrade 3+の消化管毒性や血液毒性が少なかった。

・治療後も強度変調放射線治療で治療された患者で消化管症状(腹部疝痛、排便回数増加)を訴えることが少なかった。

 

・高リスク子宮体がんを対象としたランダム化試験PORTEC-3試験のデータを用いて、3次元原体照射と比較して、強度変調放射線治療により有害イベント(AE, adverse events)や 患者報告症状(patient-reported symptoms)を減少できるかを評価した。

<方法>
・PORTEC-3試験における急性期有害イベントおよび患者より報告された生活の質(QOL, quality-of-life)のデータを解析した。
・医師により判定された急性期有害イベントをCTCAE v3.0を用いて評価した。
・生活の質に関しては、EORTC-QLQ30、CX24、OV28質問表を用いて評価した。
・データを3次元原体照射群と強度変調放射線治療群を比較した。

<結果>
・658例を評価可能であった。
・559例は3次元原体照射、99例は強度変調放射線治療により照射が行われていた。
・経過観察期間(中央値)74.6ヶ月。
・治療期間中、有害イベント(Gr 3+)は強度変調放射線治療で少ない傾向で、主に血液毒性および消化管毒性であった(37.7% vs. 26.3%, p=0.03)
・経過観察中、下痢(Gr 2+)(15.4% vs. 4.0%)、血液毒性(Gr 2+)(26.1% vs. 13.1%)は3次元原体照射と比較して、強度変調放射線治療で少なかった(p<0.01)
・生活の質(QOL)は574例(87%)(3次元原体照射 494例、強度変調放射線治療 80例)で可能であった。
・治療期間中の症状(3次元原体照射 vs. 強度変調放射線治療):下痢(37.5% vs. 28.6%, p=0.125)、排便回数の増加(22.1% vs. 10.0%, p=0.039)、腹部の疝痛(18.2% vs. 8.6%, p=0.058)。
・その他のQOL scoreに関しては差異を認めなかった。

<結論>
・子宮体がんに対する術後放射線治療において、3次元原体照射と比較して、強度変調放射線治療では治療期間中のGrade 3+有害イベントが少なく、経過観察期間中のGrade 2+ の下痢 および 血液毒性の発生割合が低かった。
・3次元原体照射と比較して、強度変調放射線治療後、経過観察中に腹部の疝痛を訴える患者が少なかった。

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BRCA 1/2変異陽性乳がんでは変異のない乳がん患者と比較して放射線治療後の治療成績に違いはあるか?

Chapman BV, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2021. PMID: 34610390

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

・BRCA1/2変異陽性乳がんに対する放射線治療後の治療成績
・後ろ向きコホート研究、米国

<背景>
・非臨床研究において、BRCA 1/2変異では放射線感受性が示されているが、BRCA 1/2変異のある患者と変異のない患者の、臨床的な放射線治療後の治療成績差に関しては不明です。

<方法>
・I-III期乳がんに対し根治手術と術後放射線治療にて治療され、BRCA 1/2遺伝子の評価を行った患者を後ろ向きに解析した。
・局所領域再発、疾患特異的死亡、二次がんを、BRCA 1/2変異陽性の有無により比較した。

<結果>
・2213例の患者にBRCA 1/2検査が施行された。
・63%は白人、13.6%はアフリカ系アメリカ人、17.6%はラテン系アメリカ人、5.8%はアジア系/ネイティブ・アメリカン/アラスカ先住民族であった。
・124例がBRCA 1変異陽性、100例がBRCA 2変異陽性であった。
・1394例(63%)に対しては領域リンパ節へ照射が行われていた。
・経過観察期間(中央値):7.4年(95% CI 7.1-7.7年)
・BRCA 1/2変異陽性群 と 変異のない患者群の比較において、局所領域再発や疾患特異的死亡に有意差を認めなかった。
・局所領域再発割合:BRCA 1/2変異陽性 11.6%、変異なし 6.6%, p=0.466
・疾患特異的死亡割合:BRCA 1/2変異陽性 12.3%、変異なし 13.8%, p=0.716
・多変量解析にて、BRCA 1/2変異と局所領域再発や疾患特異的死亡との関連性を認めなかった。
・白人と比較して、アフリカ系アメリカ人やアジア人/ネイティブ・アメリカン/アラスカ先住民族では局所領域再発リスクが高かった。
・白人と比較して、アフリカ系アメリカ人では疾患特異的死亡リスクが高かった(p=0.004)。
・BRCA 1/2変異陽性群において、照射野外、乳がん以外の二次がんの発生は観察されなかった。
・BRCA 1/2変異陽性群において、放射線治療関連毒性(Grade 3+)発生割合は、急性期 12例(5.4%)、晩期 1例(0.4%)

<結論>
・BRCA 1/2変異陽性乳がんに対する放射線治療後の治療成績は、変異のない患者群と比較して同様のものであった。
・BRCA 1/2変異陽性例に対しても標準的な治療適応に準じて、放射線治療を行うことが推奨される。

<関連>

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