とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

有害事象/放射線肺臓炎/デュルバルマブ

有害事象/放射線肺臓炎/デュルバルマブ


 

【デュルバルマブ投与のタイミング】

Yang Z et al. BMC Cancer. 2023. PMID 37817073

・局所進行非小細胞肺がんに対する化学放射線療法とデュルバルマブによる地固め療法に伴う肺臓炎

・デュルバルマブ投与タイミングと肺臓炎リスク

・システマティックレビュー/メタアナリシス

・9研究、2,560例を組み入れ解析

・肺臓炎(G3+)発生率:5.4%

・1年無増悪生存率:58%

放射線治療終了からデュルバルマブ投与開始までの期間が42日以内の場合の肺臓炎(G3+)発生率:4.1%、1年無増悪生存率:61%

<結論>放射線治療終了からデュルバルマブ投与開始までの期間が42日以内の場合、肺臓炎の発生リスクの上昇や無増悪生存の悪化はなく、治療間隔が短くても肺臓炎の発生リスクに有害な影響はない様子。

 


術前化学療法が行われた乳がんに対する手術 ー 乳房温存療法 vs. 乳房切除術 ー

Gwark S et al. Ann Surg Oncol. 2023. PMID: 36577865
・ネオアジュバント(術前)化学療法が施行された乳がんに対する乳房温存療法と乳房切除術を比較
・後ろ向き研究(韓国)
・結論:ネオアジュバント(術前)化学療法が行われた乳がんで、乳房温存手術と乳房切除術のいずれも選択肢となる場合には、乳房温存療法(BCS+RT)が好ましい治療法である様子。

<背景と目的>
・早期乳がん患者において、乳房切除術と比較して乳房温存手術(BCS)と放射線治療の併用(BCS+RT)が行われた患者で生存成績が良好であったと報告されている。
・しかしながら、ネオアジュバント(術前)化学療法(NCT)が行われた乳がん患者において、この優位性が維持されるかどうかに関しては依然として不明。
・ネオアジュバント(術前)化学療法が行われた乳がん患者を対象として、乳房温存療法(BCS+RT)と乳房切除術(MST)後の生存成績を比較した。

<対象と方法>
・手術(乳房温存手術 または 乳房切除術)の前にネオアジュバント(術前)化学療法が行われた1,641例の患者を評価した。
・傾向スコアマッチングを行い、手術法以外の要因による潜在的なバイアスを最小化し、5年無病生存(DFS)、遠隔無再発生存(DMFS)、全生存(OS)を比較した。

<結果>
・1,641例の患者のうち、839例(51.1%)に対して乳房温存療法(BCS+RT)、802例(48.9%)に対し乳房切除術が行われていた。
・乳房温存療法(BCS+RT)が行われた患者と比較して、乳房切除術(MST)が行われた患者で大きな腫瘍の患者が多く、リンパ節転移が陽性であった。
・調整を行わず比較した場合、5年無病生存率(DFS)87% vs. 73%、遠隔無再発生存率(DMFS)90% vs. 77%、全生存率(OS)92% vs. 81%で、いずれも乳房温存療法(BCS+RT)で良好であった(p<0.05)。
・傾向スコアマッチング後の比較(378例)においても、5年無病生存率(DFS)88% vs. 69%、遠隔無再発生存率(DMFS)90% vs. 76%、全生存率(OS)89% vs. 76%で、いずれも乳房温存療法群(BCS+RT)で良好であった(p<0.05)。
・傾向スコアマッチング前およびマッチング後の多変量解析において、乳房切除術(MST)と比較して、乳房温存療法(BCS+RT)は良好な無病生存(DFS)、遠隔無再発生存(DMFS)および全生存(OS)と関連していた。

<結論>
・ネオアジュバント(術前)化学療法が行われた乳がん患者において、乳房切除術(MST)と比較して、乳房温存療法(BCS+RT)による無病生存(DFS)や全生存(OS)の悪化をまねかない。
・腫瘍の生物学的特徴や治療に対する奏効が予後の指標となる。
・今回の研究結果から、乳房温存手術と乳房切除術の両方が適応できる場合には、大半の患者では乳房温存療法(BCS+RT)が望ましい可能性が示された。

骨盤内リンパ節転移陽性の前立腺がんに対する標的内同時ブースト法を用いた強度変調放射線治療(SIB-IMRT)

Nakamura K et al. Cancer Med. 2023. PMID: 36536528
・領域リンパ節転移陽性の前立腺がんに対する強度変調放射線治療(IMRT)とホルモン療法(内分泌療法)併用治療の10年治療成績の報告。
・後ろ向き研究(日本)

<背景>
・骨盤部リンパ節転移陽性の前立腺がんに対する治療は難しく、議論の的となっている。
・今回、標的内同時ブースト(SIB)を用いた強度変調放射線治療(IMRT)による全骨盤照射と内分泌療法(ADT)の併用治療の治療成績を評価した。

<対象と方法>
・対象:cT1c-4N1M0 前立腺がんに対し、標的内同時ブースト法による強度変調放射線治療(SIB-IMRT)により骨盤照射を行った67例。
・全例に対してネオアジュバント内分泌療法(期間中央値:8.7ヶ月)を行った。
・標的内同時ブースト法を用いた強度変調放射線治療(SIB-IMRT):前立腺+精嚢:78Gy/39回、転移リンパ節:66.3Gy/39回、骨盤リンパ節領域い:58.5Gy/39回。
放射線治療後、アジュバント内分泌療法が66例(期間中央値:24.7ヶ月)に対し施行された。

<結果>
・経過観察期間の中央値:81.6ヶ月(範囲:30.5-160.7ヶ月)
・10年生化学的無再発生存率:60%
・10年全生存率:80%
・10年前立腺がん特異的生存率:86%
・局所領域再発は認められなかった。
・ISUP grade 5 および 治療後のPSA最低値が0.010 ng/mL以上であった場合、前立腺がん特異的生存が不良で、去勢抵抗性に至るリスクが高かった。
・10年累積晩期毒性発生率は、泌尿器生殖器系でグレード2が1.5%、グレード3が0%、消化器系でグレード2が0%、グレード3が1.5%であった。
・グレード4の急性期および晩期毒性の発生は認められなかった。

<結論>
・骨盤部のリンパ節転移陽性前立腺がん患者に対する標的内同時ブースト法を用いた強度変調放射線治療(SIB-IMRT)は安全に行うことが可能。
・ISUP group 5 および 治療後のPSA値最低値が0.010 ng/mL以上であることが、去勢抵抗性となるリスク因子であり、そのような場合には治療強度を上げる必要があるかもしれない。

骨盤内リンパ節転移陽性の前立腺がんに対する標的内同時ブースト法を用いた強度変調放射線治療(SIB-IMRT)

Nakamura K et al. Cancer Med. 2023. PMID: 36536528
・領域リンパ節転移陽性の前立腺がんに対する強度変調放射線治療(IMRT)とホルモン療法(内分泌療法)併用治療の10年治療成績の報告。
・後ろ向き研究(日本)

<背景>
・骨盤部リンパ節転移陽性の前立腺がんに対する治療は難しく、議論の的となっている。
・今回、標的内同時ブースト(SIB)を用いた強度変調放射線治療(IMRT)による全骨盤照射と内分泌療法(ADT)の併用治療の治療成績を評価した。

<対象と方法>
・対象:cT1c-4N1M0 前立腺がんに対し、標的内同時ブースト法による強度変調放射線治療(SIB-IMRT)により骨盤照射を行った67例。
・全例に対してネオアジュバント内分泌療法(期間中央値:8.7ヶ月)を行った。
・標的内同時ブースト法を用いた強度変調放射線治療(SIB-IMRT):前立腺+精嚢:78Gy/39回、転移リンパ節:66.3Gy/39回、骨盤リンパ節領域い:58.5Gy/39回。
放射線治療後、アジュバント内分泌療法が66例(期間中央値:24.7ヶ月)に対し施行された。

<結果>
・経過観察期間の中央値:81.6ヶ月(範囲:30.5-160.7ヶ月)
・10年生化学的無再発生存率:60%
・10年全生存率:80%
・10年前立腺がん特異的生存率:86%
・局所領域再発は認められなかった。
・ISUP grade 5 および 治療後のPSA最低値が0.010 ng/mL以上であった場合、前立腺がん特異的生存が不良で、去勢抵抗性に至るリスクが高かった。
・10年累積晩期毒性発生率は、泌尿器生殖器系でグレード2が1.5%、グレード3が0%、消化器系でグレード2が0%、グレード3が1.5%であった。
・グレード4の急性期および晩期毒性の発生は認められなかった。

<結論>
・骨盤部のリンパ節転移陽性前立腺がん患者に対する標的内同時ブースト法を用いた強度変調放射線治療(SIB-IMRT)は安全に行うことが可能。
・ISUP group 5 および 治療後のPSA値最低値が0.010 ng/mL以上であることが、去勢抵抗性となるリスク因子であり、そのような場合には治療強度を上げる必要があるかもしれない。

リンパ節転移陽性の前立腺がんに対する放射線治療は治療成績を改善できるか?

Elumalai T et al. Radiother Oncol. 2023. PMID: 37330057
・多施設共同後ろ向き研究(英国)

<目的>
・さまざまな治療法で加療された遠隔転移のないリンパ節転移陽性(cN1M0)前立腺がんの治療成績を評価すること。

<対象と方法>
・対象:2011年から2019年、英国の4施設にて治療をうけた、画像的にcN1M0と診断された前立腺がんの男性。
・主要評価項目:生化学的無増悪生存(bPFS)、画像的無増悪生存(rPFS)、全生存。

<結果>
・合計337例のcN1M0前立腺がん患者を対象とし、47%の患者ではグリソングレード5であった。
・治療法:内分泌療法(98.9%);内分泌療法単独(19%)、前立腺部への放射線治療との併用(70%)、骨盤部リンパ節への放射線治療との併用(38%)、ドセタキセル併用(22%)、手術との併用(7%)。
・経過観察期間の中央値:50ヶ月
・5年生化学的無増悪生存率:63%。
・5年画像的無増悪生存率:71%。
・5年全生存率:76%。
前立腺部への放射線治療が行われた患者で、5年時点での生化学的無増悪生存(74% vs. 34%)、画像的無増悪生存(81% vs. 44%)、全生存(87% vs. 56%)がいずれも良好であった(log rank p<0.001)。
・年齢、グリソングレード、病期、内分泌療法の期間、ドセタキセルの施行の有無、領域リンパ節への放射線治療を変数に組み入れた多変量解析においても、前立腺部への放射線治療によるベネフィットが認められた(生化学的無増悪生存 HR 0.33, 95% CI 0.18-0.62、画像的無増悪生存 HR 0.25, 95% CI 0.12-0.51、全生存 HR 0.27, 95% CI 0.13-0.58)(いずれも p<0.001)。
・サブグループの数が少なく、領域リンパ節への放射線治療ドセタキセルによる化学療法の明らかな効果は確立されなかった。

<結論>
・遠隔転移のないリンパ節転移陽性(cN1M0)前立腺がん患者において、内分泌療法に前立腺部への放射線治療を追加することにより、腫瘍や治療の因子によらず、病勢制御および全生存の改善効果が認められた。