とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

骨盤内リンパ節転移陽性の前立腺がんに対する標的内同時ブースト法を用いた強度変調放射線治療(SIB-IMRT)

Nakamura K et al. Cancer Med. 2023. PMID: 36536528
・領域リンパ節転移陽性の前立腺がんに対する強度変調放射線治療(IMRT)とホルモン療法(内分泌療法)併用治療の10年治療成績の報告。
・後ろ向き研究(日本)

<背景>
・骨盤部リンパ節転移陽性の前立腺がんに対する治療は難しく、議論の的となっている。
・今回、標的内同時ブースト(SIB)を用いた強度変調放射線治療(IMRT)による全骨盤照射と内分泌療法(ADT)の併用治療の治療成績を評価した。

<対象と方法>
・対象:cT1c-4N1M0 前立腺がんに対し、標的内同時ブースト法による強度変調放射線治療(SIB-IMRT)により骨盤照射を行った67例。
・全例に対してネオアジュバント内分泌療法(期間中央値:8.7ヶ月)を行った。
・標的内同時ブースト法を用いた強度変調放射線治療(SIB-IMRT):前立腺+精嚢:78Gy/39回、転移リンパ節:66.3Gy/39回、骨盤リンパ節領域い:58.5Gy/39回。
放射線治療後、アジュバント内分泌療法が66例(期間中央値:24.7ヶ月)に対し施行された。

<結果>
・経過観察期間の中央値:81.6ヶ月(範囲:30.5-160.7ヶ月)
・10年生化学的無再発生存率:60%
・10年全生存率:80%
・10年前立腺がん特異的生存率:86%
・局所領域再発は認められなかった。
・ISUP grade 5 および 治療後のPSA最低値が0.010 ng/mL以上であった場合、前立腺がん特異的生存が不良で、去勢抵抗性に至るリスクが高かった。
・10年累積晩期毒性発生率は、泌尿器生殖器系でグレード2が1.5%、グレード3が0%、消化器系でグレード2が0%、グレード3が1.5%であった。
・グレード4の急性期および晩期毒性の発生は認められなかった。

<結論>
・骨盤部のリンパ節転移陽性前立腺がん患者に対する標的内同時ブースト法を用いた強度変調放射線治療(SIB-IMRT)は安全に行うことが可能。
・ISUP group 5 および 治療後のPSA値最低値が0.010 ng/mL以上であることが、去勢抵抗性となるリスク因子であり、そのような場合には治療強度を上げる必要があるかもしれない。