とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

リンパ節転移陽性の前立腺がんに対する放射線治療は治療成績を改善できるか?

Elumalai T et al. Radiother Oncol. 2023. PMID: 37330057
・多施設共同後ろ向き研究(英国)

<目的>
・さまざまな治療法で加療された遠隔転移のないリンパ節転移陽性(cN1M0)前立腺がんの治療成績を評価すること。

<対象と方法>
・対象:2011年から2019年、英国の4施設にて治療をうけた、画像的にcN1M0と診断された前立腺がんの男性。
・主要評価項目:生化学的無増悪生存(bPFS)、画像的無増悪生存(rPFS)、全生存。

<結果>
・合計337例のcN1M0前立腺がん患者を対象とし、47%の患者ではグリソングレード5であった。
・治療法:内分泌療法(98.9%);内分泌療法単独(19%)、前立腺部への放射線治療との併用(70%)、骨盤部リンパ節への放射線治療との併用(38%)、ドセタキセル併用(22%)、手術との併用(7%)。
・経過観察期間の中央値:50ヶ月
・5年生化学的無増悪生存率:63%。
・5年画像的無増悪生存率:71%。
・5年全生存率:76%。
前立腺部への放射線治療が行われた患者で、5年時点での生化学的無増悪生存(74% vs. 34%)、画像的無増悪生存(81% vs. 44%)、全生存(87% vs. 56%)がいずれも良好であった(log rank p<0.001)。
・年齢、グリソングレード、病期、内分泌療法の期間、ドセタキセルの施行の有無、領域リンパ節への放射線治療を変数に組み入れた多変量解析においても、前立腺部への放射線治療によるベネフィットが認められた(生化学的無増悪生存 HR 0.33, 95% CI 0.18-0.62、画像的無増悪生存 HR 0.25, 95% CI 0.12-0.51、全生存 HR 0.27, 95% CI 0.13-0.58)(いずれも p<0.001)。
・サブグループの数が少なく、領域リンパ節への放射線治療ドセタキセルによる化学療法の明らかな効果は確立されなかった。

<結論>
・遠隔転移のないリンパ節転移陽性(cN1M0)前立腺がん患者において、内分泌療法に前立腺部への放射線治療を追加することにより、腫瘍や治療の因子によらず、病勢制御および全生存の改善効果が認められた。