とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

肛門管がんに対するS-1/マイトマイシンC併用化学放射線療法 ー JCOG0903 ー

Ito Y et al. Int J Clin Oncol. 2023. PMID: 37286878

・肛門管扁平上皮がんに対するS-1/マイトマイシンC併用化学放射線療法
・第1/2相試験(JCOG0903)

<背景と目的>
・II期/III期の肛門管扁平上皮がん(SCCA)に対する標準治療は5-FUとマイトマイシンC(MMC)併用の根治的化学放射線療法である。
・今回、肛門管扁平上皮がん(SCCA)に対するS-1/マイトマイシンC(MMC)併用化学放射線療法における、S-1の推奨用量(RD)を決定し、その有効性と安全性プロファイルを評価した。

<対象と方法>
・肛門管扁平上皮がん(UICC 6th II期/III期)に対しS-1とマイトマイシンC(10mg/m2 on days 1 and 29)併用化学放射線療法を施行。
・S-1をlevel 0では 60 mg/m2/day、level 1では80 mg/m2/dayを、第1-14日および29-42日に投与した。
・化学療法に放射線治療(59.4Gy)を同時併用した。
・主要評価項目:3年イベント非発生生存

<結果>
・69例が登録された(第1相試験 10例、第2相試験 59例)。
・S-1の推奨用量は80 mg/m2/dayに決定された。
・適格例63例における3年イベント非発生生存率は65.0%(90% CI 54.1-73.9)
・3年全生存率:87.3%、無増悪生存率:85.7%、人工肛門回避生存率:76.2%。
・完全奏効率:81%。
・主な急性期のグレード3/4毒性は、白血球減少(63%)、好中球減少(40%)、下痢(20%)、放射線皮膚炎(15%)、発熱性好中球減少症(3%)であった。
・治療に関連した死亡の発生を認めなかった。

<結論>
・主要評価項目は達成できなかったものの、S-1/マイトマイシンC(MMC)併用化学放射線療法の毒性プロファイルは許容できるもので、3年生存成績は良好な結果であり、局所進行性の肛門管扁平上皮がんに対する治療選択肢になりうる。