【SABR-COMET】遠隔転移の数が少ない場合、転移病変に対する体幹部定位放射線治療は予後を改善するか?
SABR-COMET. Palma DA, et al. Lancet. 2019. PMID:30982687
【まとめ】
・がんの患者さんで、遠隔転移を合併している場合には、病気の治癒は望めないとして、全身治療が標準治療として行われてきました。
・放射線治療技術の進歩とともに、遠隔転移の数が少ない場合には、確認できる病変全てにピンポイントで照射を行うことも可能となってきています。
・SABR-COMET試験では、少数転移(1-5個)の患者さんのすべての転移に対し体幹部定位放射線治療を行うことで、緩和的な標準治療のみを受けた患者さんと比較して、生存期間を延長できる可能性が示されました。
・ランダム化第2相試験、SABR-COMET.
方法:
・第2相ランダム化試験、カナダ、オランダ、スコットランド、オーストラリア 10施設
・適格基準:18歳以上、原発が制御されている、転移病変 1-5個、ECOG PS 0-1、期待生命予後 6ヶ月以上
・層別化:転移の個数(1-3個 vs. 4-5個)
・(1:2)の割合で、緩和的標準治療群(コントロール群)と緩和的標準治療+全ての転移部位に対する体幹部定位放射線治療(stereotactic ablative radiotherapy, SABRT)を行う群(SABR群)にランダム化。
・主要評価項目:全生存。
結果:
・2012年から2016年、99例がランダム化された。
・コントロール群 33例 (33%)、SABR群 66例 (67%)。
・SABR群 2例(3%)が割り振られた治療が行われず、試験から外れた。
・コントロール群でも2例(6%)が試験から外れた。
・中央経過観察期間:コントロール群 25ヶ月 (IQR 19-54)、SABR群 26ヶ月 (23-37)
・中央全生存期間:コントロール群 25ヶ月(95% CI 19-33)、SABR群 41ヶ月 (26-not reached)(HR 0.57, 95% CI 0.30-1.10; p=0.090)
・Grade 2+有害イベントがコントロール群 3例 (9%)、SABR群 19例 (29%)に認められた(p=0.026)
・SABR群で治療関連死が3例 (4.5%)に認められた。コントロール群では治療関連死を認めなかった。
結論:
・体幹部定位放射線治療と良好な全生存との関連性が認められた。
・しかしながら、体幹部定位放射線治療群で3/66例 (4.5%)の治療関連死が認められた。
・全生存の決定的な改善効果を示すためには第3相試験が必要で、どの程度までの転移であれば体幹部定位放射線治療によるベネフィトが存在するかの検証が必要。