とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

少数転移/オリゴ転移に対する体幹部定位放射線治療は長期の生存成績を改善する。

 

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【まとめ】

・SABR-COMET試験の以前の報告では、標準的な緩和治療と比較して、転移病巣に対する体幹部定位放射線治療を行うことで生存期間を延長できる可能性が示唆されていました。

・より長い期間経過を見てみると、体幹部定位放射線治療を行った患者さんの予後の改善効果がよりはっきりとしてきました。

・転移病巣に対する体幹部定位放射線治療は、長期の生存成績への影響が大きいものと思われます。

 

 

SABR-COMET. Palma DA, et al. PMID: 32484754

・少数転移/オリゴ転移に対する標準治療+体幹部定位放射線治療 (SABR)と標準治療の比較
・ランダム化第2相試験、SABR-COMET;長期成績の報告

対象と方法:
・対象:原発巣が制御、遠隔転移1-5個、転移に対して体幹部定位放射線治療(SABR)可能。
・層別化:転移個数(1-3個 vs. 4-5個)
・(1:2)の割合で、緩和的標準治療と緩和的標準治療+SABR群にランダム化。
・主要評価項目:全生存
・二次評価項目:無増悪生存、毒性、生活の質(QOL)

結果:
・2012-2016年の期間に99例がランダム化された。
・主な原発巣は乳房(18例)、肺(18例)、大腸(18例)、前立腺(16例)。
・中央経過観察期間:51ヶ月。
・5年全生存率:標準治療単独群 18% (95% CI 6-34), 標準治療+SABR群 42% (95% CI 28-56) (stratified log-rank p=0.006)。
・5年無増悪生存率:標準治療単独群 not reached (3.2%, 95% CI 0-14 4年時点で最終患者打ち切り)、標準治療+SABR群 17% (95% CI 8-30) (p=0.001)
・新たなGrade 2-5有害イベントの発生を認めなかった。
QOLは両群間で有意な差を認めなかった。

結論:
・経過観察期間の延長に伴い、初回の解析時と比較して、体幹部定位放射線治療の全生存への影響が大きかった。
・新たな safety signalを認めず、体幹部定位放射線治療によるQOLの悪化を認めなかった。