とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

<RADICALS-RT>前立腺がんに対する前立腺摘出術後、放射線治療を行う適切なタイミングは?

RADICALS-RT. Parker CC, et al. Lancet. 2020. PMID: 33002429

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

背景:

前立腺がんに対する根治的前立腺摘出術後の放射線治療の最適な施行時期は確立されていない。

・術後(アジュバント放射線治療と経過観察を行い、生化学的(PSA)再発が認められた時点で放射線治療を行う救済放射線治療を比較した。

 

方法:

・ランダム化比較試験、RADICALS-RT(カナダ、デンマークアイルランド、英国)

・対象:前立腺がんに対する前立腺摘出術施行例、1つ以上のリスク因子(pT3/4、グリソンスコア 7-10、断端陽性 または 術前PSA 10 ng/mL以上)

・患者を(1:1)の割合で、アジュバント放射線治療群と経過観察後、PSA再発(PSA 0.1 ng/mL以上 または 3回連続での上昇)時に放射線治療を行う救済放射線治療群にランダム化。

・層別化:グリソンスコア、切除断端ステータス、予定される放射線治療スケジュール(52.5 Gy/20回 または 66 Gy/33回)、施設

・主要評価項目:遠隔無再発(freedom from distant metastases);10年時点で、救済放射線治療で想定される90%からアジュバント放射線治療で95%での改善を80% powerで検出されるよう試験をデザイン。

・生化学的無増悪生存、プロトコール外のホルモン療法、安全性、患者報告アウトカム(patient-reported outcomes, PRO)を報告する。

 

結果:

・2007年から2016年、1396例がランダム化された(救済放射線治療群 699例、アジュバント放射線治療群 697例)

・中央年齢 65歳 (IQR 60-68)

・中央経過観察期間 4.9年 (IQR 3.0-6.1)

アジュバント放射線治療群では、649例 (93%)が術後6ヶ月以内に放射線治療が行われた。

・救済放射線治療群では、228例(33%)が8年以内に放射線治療が行われた。

・169のイベントが認められ、5年生化学的無増悪生存率:アジュバント放射線治療群 85%、救済放射線治療群 88% (HR 1.10, 95% CI 0.81-1.49; p=0.56)

・5年時点での、プロトコール外のホルモン療法非施行率:アジュバント放射線治療群 93%、救済放射線治療群 92% (HR 0.88, 95% CI 0.58-1.33; p=0.53)

・1年時点で、尿失禁はアジュバント放射線治療群で不良であった(平均スコア 4.8 vs. 4.0; p=0.0023)

・2年以内の尿道狭窄(Grade 3-4)が、アジュバント放射線治療群 6%、救済放射線治療群 4%で報告された(p=0.020)。

 

結論:

・今回の初期結果からは、前立腺がん摘出術後のルーチンでのアジュバント放射線治療の施行は支持されない。

アジュバント放射線治療では、尿路合併症のリスクが高まる。

・根治的前立腺摘出術後、経過観察を行い、PSA再発時に救済放射線治療を行うことが現在の標準治療。

 

とある放射線治療医の備忘目録(まとめ)