とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

高リスク前立腺がんに対する手術(根治的前立腺全摘除術) vs. 放射線治療(外照射)

Chierigo F, et al. J Urol. 2021. PMID: 34555930
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34555930/

 

・高リスク、超高リスク前立腺がん;根治的前立腺全摘除術(RP, radical prostatectomy) vs. 放射線治療
・Population-based study(SEER database)

 

・米国のデータベース(SEER database)を使って、(NCCN分類)高リスク前立腺がんに対する手術(前立腺全摘除術)と放射線治療(外照射)後の前立腺がんにより死亡した患者の割合を比較した。

・5年間に前立腺がんにより死亡した患者の割合は、根治的前立腺摘出術後2.3%、放射線治療後 4.1%。

・高リスク前立腺がん(特にJohns Hopkins University分類で超高リスク)の患者では、前立腺全摘除術後の方が前立腺がんによって死亡する患者は少ないかもしれない。

 

<目的>
・National Cancer Network(NCCN)高リスク(HR, high risk)およびJohns Hopkins Unviversity(JH)高リスク(HR)および超高リスク(VHR, very high risk)前立腺がんに対する根治的前立腺全摘除術と外照射(EBRT, external beam radiotherapy)後のがん特異的死亡(CSM, cancer specific mortality)を比較すること。

 

<対象と方法>
・2010-2016年、SEER(Surveillance, Epidemiology, and End Results)databaseにて、NCCN 高リスク患者 24,407例を同定、これらのうち10,300例(42%)はJohns Hopkins University 高リスク、14,107例(58%)はJohns Hopkins University 超高リスクであった。
・9823例(40%)に対し根治的前立腺全摘除術、14584例(60%)に対し放射線治療(外照射)が行われていた。
・Propensity score matching(年齢、PSA、臨床T病期、N病期、生検グリソンスコア)後、1:1の割合で累積がん特異的死亡率を算出し、比較を行った。
・結果:NCCN高リスクコホートにおいて、5年前立腺がん特異的死亡率は、根治的前立腺全摘除術群 2.3%、外照射群 4.1%(multivariate hazard ratio, 0.68, 95% CI 0.54-0.86, p<0.001)であった。
・超高リスク群において、5年前立腺がん特異的死亡率は、根治的前立腺全摘除術群 3.5%、外照射群 6.0%(multivariate HR 0.58, 95% CI 0.44-0.77, p<0.001)で、根治的前立腺全摘所術群で良好であった。
・一方、高リスク群においては、5年前立腺がん特異的死亡率は、前立腺全摘除術群と外照射群の間に差異を認めなかった(HR 0.7, 95% CI 0.39-1.25, p=0.2)

 

<結論>
前立腺がんNCCNリスク分類高リスクの患者において、放射線治療(外照射)と比較して根治的前立腺全摘除術後の前立腺がん特異的死亡率は低いようで、これはJohns Hopkins Univrsity分類超高リスク群で差が認められる様子。

 

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