とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

切除可能境界膵がんに対する術前化学療法(FOLFIRINOX)後の放射線治療追加は有効か?

Janssen QP, et al. Ann Surg Oncol. 2021. PMID: 34142290

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

・切除可能(resectable)/ 切除可能境界(borderline resectable)膵がんに対するFOLFIRINOXによるネオアジュバント化学療法後の放射線治療追加の意義
・システマティックレビュー/メタアナリシス

 

<背景>
・切除可能/切除可能境界膵がんに対するFOLFIRINOXによる化学療法後、放射線治療を追加することの意義は不明です。
・今回のメタアナリシスの目的はFOLFIRINOX療法単独とFOLFIRINO+放射線治療の治療成績を比較すること。

 

<方法>
・Embase, Medline (ovidSP), Web of Science, Scopus, Cochrane, Gogole scholarにて文献検索を行った。
・主要評価項目:全生存期間中央値
・結果:15研究より切除可能境界膵がん 512例を組み入れ解析;7研究は非ランダム化研究であった。
・351例(68.6%)に対してはFOLFIRINOX単独治療(8研究)、161例(31.4%)に対してはFOLFIRINOX+放射線治療(7研究)が行われていた。
・全生存期間中央値:FOLFIRINOX単独 21.6ヶ月(18.4-34.0ヶ月)、FOLFIRINOX+放射線治療 22.4ヶ月(11.0-37.7ヶ月)
・切除率は両群で同様であった(71.9% vs. 63.1%, p=0.43)
・R0切除率はFOLFIRINOX+放射線治療で良好であった(88.0% vs. 97.6%, p=0.045)
・他の病理学的成績(ypN0, 病理学的完全奏効、神経周囲浸潤)は同等の治療成績であった。

 

<結論>
・FOLFIRINOXによる化学療法へ放射線治療を追加することによるR0切除(完全切除)率の改善効果が認められたが、生存成績には差を認めなかった。
・切除可能/切除可能境界膵がんに対するFOLFIRINOXによるネオアジュバント化学療法後の放射線治療追加の意義を決定するためにはランダム化試験が必要。

 

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