とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

有痛性脊椎転移に対する体幹部定位放射線治療の有効性と安全性

Guckenberger M, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2021. PMID: 33412262

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

・痛みのある脊椎転移に対し、体幹部定位放射線治療により高線量の照射を行った。
・3ヶ月後に痛みが軽減/消失した割合は82%で、放射線脊髄炎を発症した患者はみられなかった。
体幹部定位放射線治療による疼痛の改善効果が多くの患者でみられ、生活の質(QOL)が改善され、晩期の毒性は最小限のものであった。

 

・有痛性脊椎転移に対する体幹部定位放射線治療
・第2相試験、長期成績

 

<目的>
・有痛性脊椎転移に対する分割体幹部定位放射線治療(SBRT, stereotactic body radiation therapy)の長期成績を報告すること。

 

<対象と方法>
・前向き、単アーム、多施設共同、第2相試験
・2012年3月-2015年7月、57例、63脊椎病変を登録した
・長期生存が期待できる患者(Mizumoto score 4以下)に対しては48.5 Gy/1回、中期の予後が期待できる患者(Mizumoto score 5-9)に対しては35 Gy/5回の照射を施行した。
・疼痛の奏効:visual analog scaleにて2以上の改善と定義した

 

<結果>
・57例に対しプロトコール治療を施行し、32例に対し10分割、25例に対し5分割照射を施行した。
・生存例の経過観察期間(中央値)60ヶ月(33-74ヶ月)
・評価可能な患者にいて、3ヶ月時点で82%に疼痛の奏効(完全奏効/部分奏効)が得られていた。
・全生存率:1年 59.6%、3年 33.3%、5年 21%。
・局所椎体転移無増悪生存率は、最終経過観察時点で82%。
・晩期のGrade 3毒性は非奏効例の2例のみであった。
・脊髄炎を発症した患者を認めなかった。
・不安や抑うつを除き、体幹部定位放射線治療により、EuroQol5 Dimension Questionnaireの長期の改善が得られた。

 

<結論>
体幹部定位放射線治療により高い疼痛奏効が得られ、晩期毒性は最小限で、QOLの改善効果がみられた。

 

<関連>

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