とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

高齢者の早期乳がん, 乳房温存手術後の放射線治療は必要?

 

高齢者の早期乳がんに対する乳房温存手術後の術後放射線治療は必要?

→術後に放射線治療を行った患者さんで, 明らかに再発率が低く, 放射線治療の効果と考えられます。そのため, 術後再発を予防するために放射線治療は必要です。ただし, 放射線治療による生存期間の延長効果ははっきりしませんでした。

 

Breast Cancer 2020. Online ahead of print. 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

・本邦の高齢者乳がん;乳房温存手術後の術後放射線治療

・遡及的解析 (2010-2015年)

・対象:65歳以上, 乳房温存手術単独 あるいは 乳房温存手術+術後放射線治療施行例

AJCC 8th edition によりリステージングを行い評価

 

・170例;乳房温存手術のみ 76例 (45%), 乳房温存手術+術後放射線治療 94例 (55%)

・年齢(p<0.01) と放射線治療の施行との関連を認めた

・無再発生存率:乳房温存手術単独群と比較して, 乳房温存手術+術後放射線治療群で良好(96% vs. 84%, p=0.02)

・単変量解析;病理学的T病期, N病期は無再発生存や全生存と関連

・単変量解析;組織学的グレード, 化学療法, HER2 および  放射線治療は無再発生存との関連を認めた;全生存との関連は認めなかった

放射線治療による再発リスクの低減効果が認められた(HR 0.56, 95% CI 0.19-0.96, p=0.04)

 

結論:高齢者乳がん, 乳房温存術後の患者において, 術後放射線治療により無再発生存が改善されていた, しかしながら全生存への影響は確認されなかった