とある放射線治療医の備忘目録

とある放射線治療医の覚書

【TROG 09.02 CHISEL】末梢性早期非小細胞肺がん 体幹部定位放射線治療 vs. 通常分割照射

Ball D, et al. Lancet Oncol. 2019. PMID: 30770291 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

・I期非小細胞肺がんに対する体幹部定位放射線治療(SBRT) vs. 通常分割照射
・第3相ランダム化試験(TROG 09.02 CHISEL)。

 

<背景>
体幹部定位放射線治療(SBRT, stereotactic body radiotherapy / SABRT, stereotactic ablative radiotherapy)は手術不能I期非小細胞肺がんの治療に広く用いられている。
・しかしながら標準的な分割照射と比較して、体幹部定位放射線治療の局所制御の改善や全生存の延長効果に関する前向きなエビデンスは存在していない。
・今回、体幹部定位放射線治療と標準分割照射の比較を行った。

 

<方法>
・オーストラリア/ニュージーランド、多施設共同、第3相ランダム化試験
・適格基準:18歳以上、生検にて確認されたI期(T1-T2aN0M0)非小細胞肺がん、18F-FDG PETにてステージングが行われ、医学的に手術不能または手術を拒否した患者;ECOG PS 0-1、病変は末梢性のもののみを対象とした。
・(2:1)の割合にて体幹部定位放射線治療群と標準分割照射群にランダム化を行った(層別化:T病期、手術可能/不能 [operability])。
体幹部定位放射線:54 Gy/3回、腫瘍が胸壁から<2 cmでは48 Gy/4回
・標準分割照射:66 Gy/33回 または 50 Gy/20回
・主要評価項目:局所再発(time to local treatment failure)(仮説:体幹部定位放射線治療は標準分割照射に局所制御が優れる)

 

<結果>
・2009年12月-2015年6月、101例が登録、ランダム化された。
体幹部定位放射線治療(66例)、標準分割照射(35例)
体幹部定位放射線治療群 5例(7.6%)、標準分割照射群 2例(6.5%)は治療を受けなかった。
・各群4例が研究終了までに同意を撤回した。
・経過観察期間(中央値):標準分割照射群 2.1年(IQR 1.2-3.6)、体幹部定位放射線治療 2.6年(IQR 1.6-3.6)
・20/101例(20%)の患者で局所の増悪が認められた。
体幹部定位放射線治療群 9/66例(14%)、標準分割照射群 11/35例(31%)。
・標準分割照射と比較して、体幹部定位放射線治療で局所制御が良好であった(HR 0.32, 95% CI 0.13-0.77, p=0.0077)。
体幹部定位放射線治療群において、1つのGrade 4の呼吸困難、7つのGrade 3有害イベント(咳嗽 2、低酸素血症 1、肺感染症 1、体重減少 1、呼吸困難 1、疲労 1)
・標準分割照射群において、2つのGrade 3 胸痛を認めた。

 

<結論>
・手術不能末梢性I期非小細胞肺がんにおいて、標準分割照射と比較して、体幹部定位放射線治療は局所制御が良好で、重篤な毒性の明らかな増加を認めなかった。

 

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